足るを知る者

 作家の東良美季さんの日誌
https://jogjob.exblog.jp/
を読んでいるのだが、なんだか具合が悪そうで心配だ。東良さんは6月6日の日誌で、《月に10万円という額が稼げないという日々がもう4、5年続いている。》と告白されている。確かに日誌の文章や写真を拝見する限り、それほど贅沢な暮らしをしているようには見受けられない。でもね、質素な生活ではあるが、それを楽しんでおられるような気がしていた。清貧だが、明るく生きておられるんだと思っていた。ところがこのところ、かなり落ち込んでおられるようだ。
 それにしても本を何冊も出されている東良さんをして、月収10万を切っているとは……。文筆業というのはいよいよ割の悪い職種になってきたか。
 別の日にはこんなことを書いている。
《仕事に追われてとても苦しい。月末になると各種支払いもあるので、お金をどうしようかという心配も募る。いつか、生活の不安がなく、楽しく文章を書いて過ごせる日が来るのだろうか。今の状態だと絶対に来ない。来るはずがない。そう考えると、絶望的になる。》
 今は文章を書いて食っていける作家は限定されている。芥川賞直木賞作家でもなかなか苦しいと聞く。それにしても東良さんのこの状況はどうなのだろう。

 東良さんには、丹波篠山でお会いした時に『猫の神様』(新潮社)にサインをお願いしたことがある。唐突にサインを求められたことに少し驚かれたようだが、鞄から太いペンをだすと、おずおずという感じでサインをしてくれた。その一連の動作がとてもひかえめで物静かな方であった。ワシャとはまったく違うタイプで、とても上等なものを感じたものである。

 その人が月収10万円でギリギリの生活をしている。とはいえ、時おり、近くのスーパーの安売りで買ってきた野菜なんかを綺麗に調理したものを写真でアップしていたり、小さなアパートにも関わらず、とても居心地のよさそうなたたずまいのセンスにはいつも感心している。金なんかなくたって人は充足して生きられる、そんなお手本を東良さんに見ていた。

 ワシャは一読者でしかないので、なんの支援もできないけれど、それでも、さっそく「e−hon」で東良さんの著作を注文した。『エロ本黄金時代』(河出書房新社)である。注文した後に気がついた。この本の表紙である。かなり色っぽい。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309024318/
 ワシャは、駅前のいつもの書店で「書店着、書店支払」で「e−hon」に注文する。そして書店で、開封してもらって、梱包材は書店で処分してもらっている。だから本を剥き身でもらってくるわけだが、この表紙はけっこう辛いなぁ。社長がいればいいけれど、奥さんとか女性の店員さんだと、ちょっと照れるなぁ。
 そんなことはどうでもよかった。「足るを知る」東良さんのことである。いつも羨望の眼差しで見上げていた。同い年なので強く思うのだが、欲にまみれてしまっているワシャらの手本のような人だと思っている。頑張ってほしいなぁ。