言い訳

文藝春秋』の10月号に「このハゲーっ!」の豊田真由子氏の手記が出た。早速買い求め熟読しましたぞ。
 ううむ、なにも目新しい内容はないよう。あの怒りは日常的なものではなく、たまたま「このハゲ」秘書の挑発に乗ってしまって、あの時に爆発してしまったということにしている。かなりブレーンと打ち合わせをしたようだね(笑)。「このハゲ」秘書の無能さを前面に出すことで、「このハゲ」発言を少しでも正当化しようという戦略らしい。7ページのうち5ページが「このハゲ」秘書の失敗談に費やされている。忘れる、間違う、指示に従わない、嘘をつく、そもそもやらない、だから私(豊田)は切れたのだ、そう言い繕っている。
 でもね、どう言い訳をしようとも、「国会議員が部下である秘書を叱った」という報道が流れただけで体調を崩して入院してしまう……この脆弱さはいかばかりであろうか。それほどに病弱なら激務である議員は辞めることだ。雲隠れをするという卑怯さにおいても、彼女のやったことは許されざるものということになる。
 こんな言い訳もしている。
「あの録音については申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ、私もあんなにひどく怒ったことは、これまで一度もなく、録音を聞くと、自分でも呆然としてしまいます」
 罵声研究家(笑)のワルシャワとして言わせてもらえば、あの罵声はお淑やかな女性が突然に口に出せる類のセリフではない。普段から言い慣れていないと「このハゲー!」などという相手の欠点を的確に責める言葉は口をつかない。それに責め言葉によどみがない。これも慣れが必要で、そういった意味では日常的に使っていることは明白である。
「お前の娘がさ、通り魔に強姦されてさ、死んだと。いや犯すつもりはなかったんです、合意の上です、殺すつもりはなかったんですと。腹立たない」
 まず、秘書にお前と呼びかけている段階でOUTだ。「あなた」「〇〇さん」「〇〇くん」一般的な常識人ならそう呼ぶのではないか。そして強姦殺人の喩え話である。これはなかなか事例として並べられない。罵声研究家のワシャでも酒の力を借りたって言えるセリフではない。
 たまたま秘書がICレコーダーを記録したときに、この悪魔のセリフが飛び出してきた……なんていう偶然があるだろうか。前段の豊田氏の発言「これまで一度もなく」が嘘であるということはバレバレである。
 確かに一連の秘書の発言にも嘘は混じっている。それは人間が誰しも自分を正当化するために都合の良いように物事を変質させていくから仕方がない。そのあたりは豊田氏も秘書も五分五分と見ても、それでもなおかつ豊田氏のこの騒動、騒動後の逃げ隠れはOUTだ。