大騒ぎの午後

 ワシャは流星号(自転車)に乗って近隣市くらいなら出かけていく。北西の市に大きな書店があるし、川向こうの中核都市にはブックオフ・スーパーバザールあるんだけど、何度も流星号で通っている。

 とはいえ家に車がないかというと、家人が使うために1台だけあるんですね。それをたまに、たとえば知多半島とか名古屋南部に行く時に使っています。

 先週、常滑まで車で走ってきたんですが、帰路にエンジンの調子がおかしいんですね。エンジン音がかすれるというか、乾いた老人のしわがれ声のような音がするんです。なんとか自宅まで戻ってきて、さっそく近所の整備工場に持ち込んだのでした。

「ちょっと重症ですね」ということで、軽の代車を貸してくれた。軽自動車といってもルーフが高くて室内空間が広く感じられます。ただエンジンは所詮軽ですからなかなか吹き上がってこず、チンタラ走るという感じですかね。

 しかしそこはそれB級ライセンスでダートトライアルをしていたワルシャワですわ、エンジンを騙しだまししながら、急加速、急発進を繰り返していると、エンジンが馴染んでくるというか、まぁワシャのほうがエンジンに馴染んだんでしょうね(笑)。 それに乗って豊田まで買い物に出かけたんですね。

 買い物を済ませて、自宅まで帰りました。買い物かごと上着を後部シートから出して「?」となったんですね。「あれ、財布がない」、ワシャの財布代わりに使っているポシェット(縦15cm横24cm幅4cm)が車内にないんです。財布としては大きいものなのでシートの下に紛れ込んだりするものでもないんですが、車じゅう探しましたぞ。でも無い。

「あ、店に忘れてきたか?」

 レジが終わったあと、本を収納する段ボール箱が欲しくて、それが置いてあるコーナーで箱を物色してたんです。

「あの時、横の机に置きっぱにしかかも」と思い、急ぎ再度豊田の店まで行こうと思ったんですわ。でもポシェットの中に免許証が入っているので、不携帯で運転はできましぇ~ん(泣)。

 たまたま通りかかった隣町の役所に勤めるJ君に「車を運転して豊田のスーパーまで乗してってケロ」と頼んだのだった。

 で、店まで行ってレジのオネーサンに「グレーのこれくらいのポシェットが落ちていなかったでしょうか?」と尋ねたんですが、「まだ届いておりません」と言われる。最初に来た時に駐車したスペースあたりを探したり、もしかしたらトイレに残骸が捨ててないかとか、あちこちを見て回ったんだけど、店舗周辺にはなかった。

 そこでワシャははたと気がついた。

「そういえば店舗からの帰り道の運転中に、運転席の外側を何かが落ちていったような気がする」

 感じとしては大きめの落ち葉かなぁ?くらいにしか記憶にない。視界の右端を黒っぽいものがひらひらっと、あれか!

 J君に運転してもらって通った道を舐めるようにして確認したが結局見つからなかった。

 J君はスペイン旅行でやはり財布をなくしたという話をする。すられたのかも知れないが、とにかく警察に届けたという。でもね結局スペイン滞在中に財布は出てこないし、その後もスペイン警察から何の連絡もないという。

 おいおい、そんな話をするなよ~(泣)。

 現金が4万くらい入っていたかなぁ。キャッシュカードが2枚、クレジットカードも2枚。それ以外に免許証でしょ。保険証に医者の診察カードが数枚。図書カード、服屋のメンバーズカード。レジ袋を入れたニャンコ先生の小袋も入っている。あ、携帯電話も入れておいたんだった!

 そうだ、掛けてみればいいじゃん。「■○@%&$#Q×▽L=¥」と出れば、諦めるしかないが、とにかく一か八かで電話をした。そうするとね。

「もしもし」と日本語で返ってきた。「こちら○○署ですが、あなたは?」と相手は言う。ワシャはあわてて「その携帯の持ち主であるワルシャワと申します」と答える。

 その警察官によれば、先ほど、ワシャのポシェットが本署に届けられて、今、届けてきた人が書類を書いているところだという。

「ぜひお礼を」と申し出ると、警察官は電話を代わってくれた。落ち着いた男性の声が聞こえた。お礼を何度も言い、さらに「ぜひお会いして直接お礼申し上げたい」と申し出たんだが、「結構です」と丁重に断られた。

 感謝である。話のついでに拾った状況をお聴きすると、前を走る車の屋根から黒っぽいものが落ちてきたので、それを拾ったということで、その足で本署に立ち寄ったと言われる。本当にありがとうございました。

 その足で本署まで行って、拾ってもらったポシェットを無事受け取ったのでした。拾い主には会えなかったが、ポシェット探しに付き合ってくれたJ君には寿司とウナギをご馳走しました。

 ワシャの家の車は車高が低いので、後部シートに荷物を出し入れするときに、両手をフリーにするため手に持っているものをルーフの上に置いておく。積み終わって、ルーフ上のものが当然視界に入るのでそれも車内に積み込んで出発する。

 しかし昨日は初めて乗るルーフの高い軽自動車で、上に置いたものが視界に入らなかった。それで出発してしまったんですね(アホ)。

 それにしても善良な日本人に拾っていただいて有り難かった。

 まぁこのところ気の抜けた生活をしていたので、こんな詰まらぬことで半日つぶしてしまった。反省しきりじゃ。

 ポシェットに付けておいたキーホルダーのニャンコ先生がニヤリと笑っている。