昨日、愛知県碧南市で桂宮治の独演会があった。宮治の演題は「ちりとてちん」と「お見立て」。開口一番は前座の桂れん児が「狸の札」でご機嫌をうかがう。
まずはれん児である。亭号が「桂」なので、てっきり宮治と同じ「桂文治一門」かと思いきや、「古今亭今輔一門」の桂歌丸の孫弟子だった。同じ落語芸術協会ということと同じ亭号ということで客をたぶらかそうとしたか(笑)。このチラシの男のほうね。
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/event/2510yukiji.html
さて、宮治である。もうのっけから飛ばす飛ばす。客をいじり倒して、また碧南をそこまで言うかというくらい小バカにして笑いを取る。「時間があったのでこのホールの周辺を散歩したんですが、なにもないですね」とかね。そんなマクラを展開している最中に、会場の前列で携帯を鳴らしたバカがいた。あわててバカは切ったのだが、宮治が「トゥルルルル」と着信音をマネして高座で携帯に出るという挙に出た。会場は大爆笑だった。
ワシャは宮治を大須演芸場で二つ目の時に見ている。その時にはここまで変貌するとは思えなかった。
「ちりとてちん」は有名な演題なのだが、元の噺とは別物のような仕上がりになっている。食通を自任する嫌な男が腐った豆腐を食わされるのだが、その苦しみ方が尋常ではない。客のことなど放っておいて高座の上で大騒ぎをする。またこれが大爆笑となる。
「お見立て」は廓噺で、田舎者のお大尽が花魁を尋ねてくるのだが、花魁は田舎者が大嫌い。若い衆に「適当に断っておくれ」と命じる。若い衆は「病気」だの「死んでしまった」だのと嘘をつき誤魔化すのだが「んだば、墓めえりにいくべい」と追い詰められ墓所までいってまた大騒ぎ・・・といった噺。まぁこの廓噺も爆笑の渦につつまれた。
なにしろ落語会の逸材である。いずれは春風亭一之輔と双璧をなしていく落語家だと思う。でもね、幕が閉まって冷静になってみると、同じようなテンションでの2席だったので、2席目はもう少し噺を聴かせる落ち着いたものでもよかったのではないか。49歳の今はこのテンションで突っ走ってもいいが、年齢を重ねていくことで落語の「味」のようなものを身につけていってほしい。
一席目とはがらりと雰囲気を変えてシンミリ聴かせる人情噺「文七元結」とか「唐茄子屋」にしてもいいのでは。
なにしろ名人に名を連ねる要素はたくさん持っている。今後の精進に期待したい。