人間を見つめる

 また「折々のことば」で、どーもすいません(笑)。

 朝食をとりながら新聞を寛げていたら、いの一番に目に飛び込んできたんですわ。

《ぎこちなく荷をかついでいる・・・少年の姿には、労働とは無縁に生きてきたことがむき出しになっていた。》

 吉村昭のエッセイの1フレーズが引かれている。これをワシャは読んで知っていた。

 吉村昭さんは、この人もワシャの大好きな作家である。司馬遼太郎池波正太郎についで熟読をしている人。とくに吉村さんの書くエッセイが好物なんですね。なぜかというと、吉村さん、かなりの酒好きで、酒にまつわる話が多く読める。

 この日記では最近は2022年10月15日「長崎で感じたこと」に書いている。吉村さんのエッセイ集『わたしの普段着』(新潮社)の中に「長崎のおたかちゃん」と題した小品がある。ここ地方に行った時にたまたま見つけたすてきな小料理屋、居酒屋のことが出てくる。吉村さんのエッセイを読んでいると、やっぱり飲みたくなるんですね(笑)。

 話が逸れてきた。冒頭の「折々のことば」である。その言葉は吉村さんの『街のはなし』(文藝春秋)の中に入っている。2ページ30行1000字程度の短い文である。この本にも酒の話がけっこうあって、「いい肴と酒」という作品には大きめのオレンジの付箋が打ってある。よほどこの「いい肴と酒」が気に入ったとみえる。

 で、他にも小さめの付箋が何枚か打ってあって、その1枚が「十七歳の少年」という冒頭のフレーズを含むエッセイだった。

「折々のことば」では、この華奢な少年の話と、やはり『街のはなし』に出てくる夫を亡くしたばかりの若い女性の話を織り交ぜて紹介している。内容には触れないけれど、作家の人間観察の鋭さが垣間見える切れ味のいい短い文章だった。少年も寡婦も与えられた場所で一所懸命に生きようとしていることが伝わってきて、ワシャもジンとしたものである。

 吉村昭さん、小説もいいけれど、エッセイがまたおもしろい。