おそる

 今朝の朝日新聞社会面に《恐る恐る陳情 見えた光明》と題した記事があった。内容は、コロナ下で大きな赤字を出した居酒屋の店主が、地元の政治家たちに窮状を説明に回ったところ、意外にも政治家たちのフットワークがよく、役所の窓口も協力的で解決策が見えてきた、というもの。

 それはよかったね。でね、今日の話題はその内容ではない。「恐る恐る陳情」の「恐る」という言葉についてである。

 以下は論語研究の泰斗である加地伸行先生の講義も参考にさせていただいた。

 

 漢字というのは多種多様ですね。奥の深さが尋常ではない。「おそれ」という漢字だけでも「恐」「怖」「畏」「懼」「虞」「懾」「慴」「竦」などあって、これらの意味合いが微妙にニュアンスが違って、それを漢字は使い分けている。

 ワシャらに一番馴染のあるのが「恐」と「怖」であろう。2つ合せて「恐怖」という言葉になり、辞書に依れば「恐怖」は「恐ろしく感じること。またその感じ」とあるが、かなり曖昧だ。

 漢字辞典に依れば「恐」は「先のことを心配する」というような意味で、「怖」は「他者に驚かされる」ということで、「恐怖」は厳密に言えば、「他者に驚かされて先行きを心配する」となる。

「畏」(い)=「敬服する」という意味である。「畏敬の念」などと使うでしょ。

「懼」(く)=「警戒する。慎重に行う」ということ。

「虞」(ぐ)=「心配する」なのだが、「憂う」に近い心配。

「懾」(しょう)=「意気を喪失する」

「慴」(しょう)=「おそれて気が動転する。おそれおののく」

「惶」(こう)=「驚きあわてる。おそれて何をしていいのか分らない」

「怕」(はく)=「心配する」。意味としては「恐」と近く、「おそる」を全体的に包含する。

「竦」(しょう)=「身をすくめる」

 これ以外にも「おそる、おそれる」という漢字は10以上あって、微妙な心情の変化、受け止め方で使い分けている。漢字の奥深さには惶恐(こうきょう)させられますなぁ。

 だから冒頭の居酒屋の店主の心境になると、「恐る懼る畏る竦る陳情した」という漢字でしょうか・・・間違えた、感じでしょうか。

 

 そうそう昨日の夜、名古屋新栄でMID-FM76.1に参加してきた。パラアイスホッケーの関係者のお話を聞いてきたのだった。読書会も兼ねていて、課題図書は、バンクーバーで銀メダルを取った遠藤隆行さんの著書『自信は生きる力なり』(青志社)である。

 もちろん終了後に美味しいお酒をいただいた。あ~楽しかった。