夕べ、読書会。課題図書は高山正也『図書館の日本文化史』(ちくま新書)だった。帯には「はじめての図書館全史」とあり、図書館オタクの
ワルシャワとしては、どちらかというと好物の範疇だ。選んだのがワシャならみんなからブーブー言われるところだが、選書はパセリ君だったので助かった。
内容については、全6章からなっている。ただ第1章から第4章までは、まさに書籍文化史であるので、資料としては役に立つけれども、では「図書館の現状」についてはというと、ほとんど関係がない。1~4章を飛ばして、第5章から読めば、図書館の置かれた現状が明治期以降の動きに照らして解説されており参考になった。
また「主要参考文献」を見ると、江藤淳『閉された言語空間』(文春文庫)、西尾幹二『国民の歴史』(産経新聞)、サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』(集英社文庫)、福沢諭吉『西洋事情』(慶応義塾大学出版)、そしてなななんと、百田尚樹『日本国史』(幻冬舎)が挙げられている。ほほお、これは面白いスパイスが効いていそうな感じで、期待できそうですな。
高山氏、懸念されいていることは図書館司書の人材確保とその処遇だった。
《日本の図書館の現場から考えると、図書館員の処遇があまりにも低かった》
《より待遇がよい仕事に転職するため、優秀な人材が図書館に残らないという事態が生じた。》
《日本の図書館員は社会的に尊敬されておらず、その意向や発言内容が世の中に受け入れられることも少なかった。》
この人、司書側に立っていることは明白で、故に司書職を軽視してきた風潮を厳しく責めている。
それはそのとおりで、ワシャは地元の図書館でもかつて司書職は一般行政職の一段下に置かれ、「業務は本の貸し出しをしているだけじゃないか」という見方が強かった。
また一般行政職から図書館に送られるのは、無能か病気か左遷のどれかであった。
このことを問題として掘り起こすとともに、「図書館はレファレンスサービスに重点を置くべきだ」と主張する。
これもそのとおり。まさに西三河に5年前オープンした「アンフォーレ」という図書館は、司書の貸出返却業務を完全に自動化して、司書業務をレファレンス対応に特化することに成功した。まさに高山氏の言う「利用者が目指す目的に向けて始動・誘導することが必要」を実践しているのである。
また文中で、図書館などへの支援について、外務省、文部省、日本学術会議の暗躍で「その結果、学術分野では東京裁判史観などの反日的歴史観やプロパガンダが横行するという現状になった」と記載されている。
これは幣原内閣時代の話なんですけど、大昔から日本学術会議は「癌」だったんだね(怒)。
ここまでは評価の部分。
ここからは批評の部分。
最終章の中で、TRC(図書流通センター)への指定管理について高い評価をしていたところ、あるいはCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)にも好意的な論評を出しているところである。
ワシャはこの指定管理の図書館を何館か見て回った。TRCは日比谷、大宮、春日部、大和など、CCCについては武雄、海老名を確認した。
これらを見て廻って感じたことは、「指定管理はダメ」ということに尽きる。
言い出せばキリがないが、接客からレファレンス、書籍の整理、施設の整備など、まともなものが見当たらなかった。
愛知県の小牧市はCCCに指定管理を委託するつもりだったのが、ひっくり返って直営(行政が直接運営すること)になっている。「高山氏、そのあたりの調査に行っていないんじゃないか?」と疑問を持ってしまった。
ただ読み進めると、「あとがき」でTRCの社長の名前が出てくるのである。お世話になったかたということで名を挙げている以上、TRCの悪口なんて絶対に言えないやね。それじゃぁダメじゃん。
TRCの図書館運営のやり方をきっちり見て、CCCの現状を充分に研究した結果だとは思えない記述であり、おそらく最近の図書館を見ていないのではないかとさえ思えてくる・・・というようなことを議論した読書会であった。