この日本をどうする

 昨日、書棚から引っ張り出してきた石原慎太郎さんの対談集『この日本をどうする』(文藝春秋)を何年かぶりに読み直している。20年くらい前に買ったんだろう。2~3度読んで書棚に入れっぱなしだったので、内容はほぼ忘れている。しかし本に流れる思想的なことは、確実にワシャの血肉になっているはずだ。

 再読して、革めておもしろかったところを記しておく。

《河野君は、以前、外相で東南アジアに行く時に台風の影響で、台北緊急着陸したら、何と「中国はひとつ」というわけで機内から一歩も出なかったと、後に銭其琛外相に得々と喋ったという。こういう政治家は、絶対にどこの国からも尊敬さないね。》

「河野君は」というのは河野洋平氏のこと。

《最近の言葉狩りやら、「失言を撤回せよ」と居丈高に告発するやり方は、日本に於ける言語空間を狭くするだけだ。》

 この本は20年前のものなんだけど、その頃から「言葉狩り」が続いている。今は当時よりさらに酷くなっていて、「男らしさ」「女らしさ」という美しい言葉まで狩られる時代になってきた。言葉の人石原さんの無念はいかばかりであろうか。

 石原さんの訃報が紙面に載った2月2日の天性チンコは、この言葉狩りを徹底している(蔑)。

三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している」

「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは、ババアなんだそうだ」

「(東日本大震災は)やっぱり天罰だと思う」

 この3フレーズを出して、その直後に《人権意識の低さには呆れ返ることが何度もあった》と続ける。

 しかし、最初と二番目の発言は左翼メディアの「切り取り報道」でほぼ捏造されたもの。三番目は、まさに日本の歴史を踏まえれば、大災害を天罰として感じることは、日本人として当然のことではなかろうか。「天からの警告だと意識して自分たちの身を振り返ろう」と言っている。

 天罰を食らったのは当時の菅直人政権であり、石原さんほどの繊細な人物が、あの震災で亡くなられた方々を揶揄したのではないということは、石原さんの人柄を知っている人たちから数多語られている。これもメディアの印象操作が癌と言っていい。

 本に戻る。石原さんは東日本大震災の前に、防災の重要性について触れている。金美齢さんとの対談の折である。

《九月三日に「ビッグレスキュー東京2000」と名付けた総合防災訓練を行いますが、それは陸海空の三軍合同による大規模なものです。あえて「軍」と言っているのは、別に挑発しようというのでなくて(笑)、大規模な災害に対処できる機動力や技術力を持っているのは、やっぱりどこの国でも軍隊なんですよ。言葉のごまかしはもういい加減やめるべきで、その機能をきちんと都民、国民に見せるべきだと私は思っています。》

 まさにこの後、東日本を大地震津波が襲って、そこで自衛隊が大活躍したことは記憶に新しい。

 こういった最も災害時に役に立つ自衛隊との合同訓練を阻んだのが左翼知事だった美濃部亮吉だった。彼の思考の中では、都民の安全よりも己の思想信条の方が優先事項だった。これは日本国を嫌いな左系に共通する行動形態なんだけどね。

 その他にも「ウンチブラシでのしつけの話」とか、「出勤する自分の家から職場までの間に感動する話し」とか、後半に僧侶の松原泰道さん、五木寛之さんとの対談は「法華経」の話に踏み込んでいて、とても含蓄があって読みごたえがあった。中曽根さんとの話でも坐禅白隠禅師の呼吸法の話になり、もしかしたらワシャの白隠禅師好きはこのあたりから始まったんだっけ?と思ったのだった。

 てなことでとてもいい一冊で、いい本は何度読んでもいい勉強になるのであった。