神々の山嶺

 明けて2日、夕べは何も呑まずにぐっすりと寝た。よほど年末年始の疲れがたまっていたのだろう。

 とはいえ、寸暇を惜しんで読書はしている。でね、今年ののっけにいい人に出会った。羽生丈二というクライマーである。この人にはやられた。ガツンと年始早々一発食らってしまった。

 この人、実在の人物ではない。夢枕獏さんの小説『神々の山嶺(いただき)』(集英社文庫)の主人公である。この人の生きざまに今さらいい年こいたオッサンが感動した。

 夢枕さんの小説はたくさん読んでいる。書棚にも『陰陽師』などがずらっと並んでいる。でもね、『神々の山嶺』は読んでいなかった。「山岳小説」と言われてしまうと、ちょっと触手が伸びなかったのだ。

 それが年末に、なにかの美術番組で「谷口ジロー」の特集をやっていた。漫画家の谷口ジローは知っていた。それこそ30年前くらいに犬を飼う話を読んだ程度かなぁ。  番組ではその話『犬を飼う そして猫を飼う』(小学館)が取り上げていて、「ああこれこれ」って思い出したものですわ。

 その他の作品にも触れていて、その中にコミック『神々の山嶺』が紹介されていた。でね、近くのブックオフに行ったとき、そのコミックの第1巻があったんで買って読んだんですわ。そうしたら主人公の羽生丈二にはまってしまいました。さっそく何件もの古書店をまわり全5巻を揃えて読み、さらに小説の上下巻を入手して読み終えたのが今朝の明け方だった。 いやはや、令和4年ののっけから男の生き様、漢の死に様を突き付けられた(泣)。しかし、羽生丈二のような激烈な生き様、エベレスト南西壁単独無酸素登頂などという芸当はできるものではないが、しかし実際に羽生同様に世界最高峰に立ったクライマーは数多凍て(誤字ではありません)、その死に様も感動を呼ぶ。

「まだまだワルシャワ、生き方があまいぞ」と羽生にビンタを食らったような幻覚に襲われた。

「よし、今年一年も全力で駆け抜けるぞ」と、年初に決心をさせるには充分な1冊であった。

 さらに言えば、宮部久蔵だな。この二人の生き様、死に様から何をくみ取るか、これが令和4年の課題になりそうだ。

 さて、今日もあちこちと走り回らなければいけない。羽生や宮部に負けないように、オッサンも頑張りまっせ!