死して後に已む

 保守系の月刊誌『WiLL』(ワック出版)が200号となった。ということは、かれこれ16~17年にもなるのか。途中で花田編集長が分離して月刊『Hanada』(飛鳥新社)を出すことになる。当初、購読者としては、2誌になるのは予算的に倍になるわけだし、内容はそれほどの変化もなかろうから、要は保守雑誌の厚みが増えただけで、かえってクオリティが落ちるのではないかと懸念していた。

 でも、花田さんの分離後も執筆陣は大きな変動もなく、また新たな論客が登場し、さらに多くの複数の意見に触れることができ、保守論壇の充実という意味では善哉善哉。

 さらに漢学の泰斗である加地伸行先生の論説をWで読めるのはありがたい。なにしろ漢籍からの引用でいろいろな事柄を説明してくれるので、アホには分かりやすいのだった。今回の『Hanada』は「雪後の松」という言葉を教えてくれる。

先生の解説が的確なので引用します。

《花も咲かず暑い夏にはどうと言って見所のない木だが、雪の積もる真冬には枝を折るほどの雪が積もっても、それに耐えて青い葉を保っている。》

「これが本物の男の姿だ」と言い、そのとおりに生きたヤクザの安藤昇を高く評価しておられる。

 この論説で「雪後の松」の出展が『論語』の子罕篇だということを教えてくれた。ワシャはアホだけど「雪後の松」は知っていた。『論語』も呉智英先生について2~3年勉強したつもりだったが、「雪後の松」とはつながらなかった。まだまだ浅いのうワルシャワ

 さらにヤクザ者の安藤がのちに「雪後の松」を「ある坊主から教わった」と言っていたことで、「坊主」は「禅宗の僧侶」が『論語』の文を「偈(げ)形式」で述べたものを安藤が聴いたのではないか?と推論を展開している。「偈」というのは浄土真宗の葬儀の際に唱えられる「正信偈」の「偈」で、「偈」は仏教教理を詩のような形式で述べたものだと教えてくれる。

 ううむ、勉強になるのう。

 

『WiLL』のほうも200回続く論説「朝四暮三」がおもしろい。今回は、NHKの連続テレビ小説「おちょやん」の話題だった。要するに「おちょやん」の主演女優の演技力の評論で、どちらかといえば酷評だった。ワシャは最近の若い俳優に特段の思い入れもないので、何とも思わない。でも、先生は、活舌の悪さ、声の聞き取りにくさを批評するに『礼記』を引いて《歌ふ者、上に在り。匏竹下に在り。人声を貴べばなり》と、人の声の重要性を解く。

 双方合わせて263回も講義を受けてきた。少しはマシになってんのかなぁ。自分の評価はアホのまんまだけど。