選択的夫婦別姓制

 今朝の朝日新聞「声」の欄。《旧姓の通称使用 万能ではない》という50代女性からの投稿があった。この人、選択的夫婦別姓推進論者で、反対派の言う「旧姓の通称使用で問題は解決できている」という意見に対し「そうは思えない」と疑義を呈している。

 そもそも反対派は「解決できている」とは言っていない。この女性が誰の発言を根拠にそう言っているのか投書だけでは判らないけれど、少なくとも別姓反対を明確にしている元総務大臣高市早苗さん、作家の武田恒泰さん、ジャーナリストの有本香さんは「すべてが解決できているわけではないが」という前提に立っている。

「全部解決できている」という前提でオバサンは、パスポートの話を持ち出してくる。

《海外の会議に申し込み、空港に迎えを頼んだ時だ。ICチップにある姓での搭乗しか認めない航空会社にしたので、会議は旧姓、航空券は戸籍性と食い違いが生じた。》

 はいはい、それでなにか不都合が生じましたか?会議場に入場する際に、航空券の提示を求められましたか?

 なにも問題は起きなかったので、このオバサン、《ふと思った》のであった(笑)。

「私が載っている飛行機が墜落したら、搭乗員名簿に載っている戸籍名が報道発表される。そうすると迎えに来た人は、私がその飛行機に搭乗しなかったと安堵する。私の旧姓しかしらない友人は、犠牲者名簿を見ても私が死んだことを気づかない。私は死んだことさえ分かってもらえない存在だわ~!」

 まあまあ、そう興奮しなさんな。空港に迎えに来た人には、すぐに伝わらないかも知れないが、すぐに何らかの方法で(例えば日本の家族とか事務所に連絡するとかして)日本を出たかどうかの確認をとるだろう。そして確かに自宅を、日本を出ていることが判れば、未特定の犠牲者の中から下の名前を見つけるのはそれほど時間の要することではない。確認の電話で戸籍姓を聞いておけば、瞬時にオバサンの死は確認できる。オバサンは言う。

《旧姓の使用には無理がある。私は、生まれた時から使っている、私の名前を取り戻したい。》

 おいお~い、今も旧姓を使っているんでしょ。そして不便(本人が思っているだけ)だったのは《ふと思った》その一事だけでしょ。

 戸籍制度をいじると、それこそ夥しい関連の法案、条例、規則、慣習、システムの変更を伴う。そしてなによりも日本の戸籍制度というすぐれた仕組みを根幹から破壊することになり、これを再構築しようとすれば膨大な労力と予算を必要とする。さらに、千何百年にわたって培われてきた歴史、文化、伝統などをひっくり返すことになる。歴史を壊そうとする夫婦別姓推進論者は、日本を破壊しようという顔ぶれと、無知な自民党政治家に限られている。

 市川團十郎の戸籍名を知っていますか?彼らは航空機に搭乗する時、戸籍名で登場してますよ。團十郎は死んでからもずっと團十郎で、戸籍名はほとんど知られることもないだろう。團十郎が「私の本当の名前を取り戻したい」と言うだろうか。

 オバサンも、戸籍の名前以外に使える名前があるなんて格好いいと思わなくっちゃ。

 そして、旧姓使用による不便は一部にあるだろうが、それこそそっちを修正していく方が労力としては、はるかに少なくて済む。国家的混乱を受けない。

 その航空会社に「通称使用している名前で登場させて」と投書すればいい。

 詰まらぬ話に、まともな多数の国民を巻き込むことはやめてくれ。