懲りない新聞

 今日の「天声人語」がまたやってしまった。604字のうち331字が本からの引用とニュースからの切り取りで埋まる。さらにネタは一昨日の《二階俊博幹事長の「他山の石」発言》で、ニュースとしては旧聞だ。たかが原稿用紙1枚半に48時間もかけて、すごい仕事量ですな(笑)。

 おそらく「二階発言」を批判しようと思ったところから、資料・文献の物色が始まった。

「何か突き放すような、小ばかにするような発言を誰かしていないだろうか?」

 ここで天声人語氏は、立川談四楼   『もっと声に出して笑える日本語』(光文社知恵の森文庫)を読んでいたんでしょうね。ここらは読書家なんだろう。あるいは落語ファンなのかもしれない。

 この本を広げるとのっけに331604の半分を占めるエピソードが載っている。天声人語氏「しめた!」と小躍りしたでしょうね。これで1本コラムが書けた。手軽なもんですな(笑)。

 書き出しを引く。

《絶対あってはいけない言い間違いだが、やってしまった。そんな実例が、落語家立川談四楼さんの著書・・・》に続けて、ある会社の決起集会での言い間違いをもってくる。営業本部長が「みんな、一糸まとわぬ団結心で頑張ろう」とぶち上げ、それを受けて社長が、「後戻りはできないぞ」と前置きをして「すでに匙は投げられた」と言い間違えたそうだ。

 これを前振りにして、最後の締めで《一糸乱れぬ団結が自民党にあるからか。見ているこちらが匙を投げたくなる。》と落とす。

 でもね、令和のご時世である。いろいろな新語が日々生まれている。「一糸まとわぬ団結」は、「自分を裸にして隠し事のないないチームとしての団結心」とも解釈できぬこともないし、石油製品が世に出回っていることを知らなかった環境大臣が、「匙」を有料化にするご時世である。その判断を「すでに匙は投げらた」と表現するのもありだろう。

『もっと声に出して笑える日本語』は平成21年の本である。すでに十二支は一回りして、十年一昔を越えている。言葉というものは生き物で、じゃんじゃん生まれ、どんどん消えていく。「チョベリグ」なんてもう誰も言わないですよね(笑)。

 そろそろ結論、今日の「天声人語」は、朝日新聞好きの年寄りには理解できるだろうが、ワシャのように若い気持ちを常に持ち続けているオッサンや、言葉に敏感な若者たちには、天声人語氏が「絶対あってはいけない」というほどひどい言い間違いとは思えない。

 そこの踏み込みが甘いから、天声人語氏の二階氏発言への攻め込みに共感ができないのである。

 駄コラムで高給をもらっている記者さんよ、もう少し文章のセンスを磨け。