飛べエリート(笑)

 愛知県内の武漢ウイルス感染者数(市町村別)が中日新聞に掲載されている。それはそれで参考になるんだけど、ちょっと切り口を変えて見てみるとおもしろい。

感染者数の累計を総人口で割ってみた。ワースト1は名古屋市で0.493%の感染者数である。1000人に4.93人、つまり5人くらいが感染している。やはり名古屋市が最高値だ。市のレベルで一番少なかったのが田原市で0.112%、つまり1000人で1人ということになる。その次が新城市で0.115%、3位が常滑市、4位が高浜市安城市は5位につけている。安城市以外は本線、本通りから外れているのでさもありなんだが、安城市は新幹線の駅もあり、JRも名鉄も本線が通っている。のに、0.169%と健闘している。単なる田舎ということなのかなぁ(笑)。

 この「感染者数/人口」で見ていると、特徴が顕著に判る。割合の高いところが圧倒的に名古屋周辺なのである。ワースト10にランキングされている自治体は、あま、弥冨、小牧、北名古屋、清須、愛西、日進、春日井、岩倉となっている。愛知県の方ならわかると思うけれど、全部、尾張である。

 要するに名古屋から周辺部に染み出している構造が見て取れる。つまり名古屋できっちりとしたウイルス対策をしていれば、愛知県の感染拡大はある程度防げるのではないか。さらに言えば、県がきめ細かい分析をしていたなら田原市新城市、西三河知多半島などでの時短要請などする必要がなかった。すで飲食店等はしっかりした対策をとって営業をしていたし、そうでない店は客のほうが敬遠していた。

 ベスト5位についている安城市の例なのだが、2月1日~7日までの1週間の患者数が名古屋(250)、豊橋(59)、岡崎(52)、豊田(49)の中核市以上の都市に次いで、ワースト5位になってしまった。一宮(29)、春日井(14)を軽くしのいで39人の感染者を出している。

 安城市の突出した数、これは飲食店での感染ではない。情報統制されていて明確なことは伝わってこないが、どうやら高齢福祉施設でのクラスターらしいことがわかっている。

 このことから、東京、大阪、名古屋などの大都市ではいざ知らず、たかだか20万人程度の町で飲食店を制限する必要があるのだろうか。田舎の飲み屋など、ウイルス対策をきっちりやっている。そういった真面目な店は通常営業でいいじゃないか。ほとんど個人的な恨みで言っていますよ。

「飲みに行きてー!」

 もうひとつ、感染者へのいじめなどの懸念から、自治体はまったく感染情報をまったく出さないが、これは少しおかしいと思っている。大多数の住民は不安なのだ。例えば安城市、どこかの高齢福祉施設クラスターが起きたというニュースは伝わるが、どことは絶対に示さない。しかし、市内にはいくつもの施設が点在し、住民たちは「もしかしたらうちの近くのあの施設かしら?」と疑心暗鬼になる。そしてバカな住民はそこに対してクレームを言っていったり、嫌がらせをするかもしれないが、そんなバカはごく少数だ。「あそこだ」ということが分かれば距離を取りつつ生活をするまともな住民の気持ちを救うためにも、もう少し情報を出してもいいのではないか。

「市の南部の施設」と言うように東西南北だけでも他の3つの方向の住民はホッとする。緊張させておくばかりがベストではない。

 

 医師で寄生虫学の権威である藤田紘一郎先生の一連の寄生虫本が気に入っている。ざっと15~6冊は書庫に納まっている。その中に『手を洗いすぎてはいけない』(光文社新書)があり、清潔ばかりが必ずしもいいわけではないことを訴えている。超清潔志向はかえって免疫力を落とすと警告をしているんですね。今、厚生労働省が並べている知識、例えばマスクへの過信や、過剰なまでの消毒行為が、はたして絶対のものかを考えるいい一冊だと思う。

 その中にアインシュタインの言を引いて「想像力は知識よりも大切だ。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む」と、想像力を働かせてウイルスに対処せよと言っている。居酒屋で飲んでいる時も、想像力を働かせて、「今、この空間に武漢ウイルスが飛んでいるのでは?」と神経質に考えながら飛沫対策をして静かに一献傾ける。

 一人ひとりが理想と問題意識を持たずして、武漢ウイルスの危機を乗り越えることができるのだろうか。ここで藤田先生はあるアニメの主人公のセリフを出してくる。

「飛ばねえ豚はただの豚だ」

 この名セリフに続けて藤田先生は言う。

《これは、宮崎駿氏のアニメーション『紅の豚』のなかで主人公が語った有名なセリフです。私もそれにあやかって、こう言いましょう。「想像力のないバカはただのバカだ」》

 厚生労働省の官僚たちは、まさに飛ばない豚です。知識は山ほど持っていても「想像力を働かせる」という大切な部分を子供の頃に置き忘れてきたのでしょう。

 これがこのところ言い続けている東大病なのである。子供の頃から知識を詰め込むことに専念し、そのことで家庭内も学校も社会までもが「優秀な子供、将来のエリート」として扱ってくれる。このことが想像力のない偏ったおりこうちゃんを育ててしまった。

 さあて、疲弊する経済を、飲食業界を、日本の居酒屋文化を、どう立て直すか、日本のトップエリートたちのお手並みを拝見しよう。

 

 今朝の朝日新聞に俳優で声優の森山周一郎さんの訃報が載っていた。

《俳優・声優の森山周一郎さん、肺炎で死去 86歳 『紅の豚』ポルコ・ロッソ役》

https://news.yahoo.co.jp/articles/abccea5d10cfd5c04322f5e2ebca0d1777f9ced7

 ワシャの子供の頃、テレビで洋画をやるようになった。ジャン・ギャバンやテリー・サラバスの渋い吹き替えは印象的だった。また昭和が消えていく。ご冥福を祈る。