おもやもや

 時には産経新聞にも文句を言う(笑)。

 今朝の1面、最上段にある「朝の詩」である。一般読者の詩を、詩人が選んで載せている。今日の詩は「コタツ」と題されたものであった。

「コタツのことを 気安くおこたなどと 呼びますが コタツはなんにも怒ったりせず・・・」

こんな感じで始まるあったかい詩なんですが、ワシャは読んだとたんに「え!」と思ったんですね。

「コタツ」という名詞があって「おこた」という呼び方もある。コタツは「炬燵」とか「火燵」と書いて「こたつ」と読ませる。形状が似ていることから「脚立(きゃたつ)」から来ているという説もある。どちらにしも単なる名詞であり、そこに丁寧さは伴わない。

 ところが、「おこた」には「御」の字が冠されている。「御炬燵」から「御こた」になった。宮中の女房言葉である。つまり、めちゃめちゃ丁寧な言葉であった。『京ことば辞典』(東京堂出版)でも、「こたつの丁寧語」と解説している。

 作者は「気安く呼びますがコタツは怒らない」と言う。しかし、「おこた」のほうが丁寧に言っているのであって、「こたつ」のほうが失礼なのである。

 

 ちなみに公家言葉で「おかちん」は「餅」のこと、その餅に餡をまぶすと「おべたべた」となる。餡子で「べたべた」だからでしょうか(笑)。「水」は「おひや」、「酒」は「おっこん」、一献の「献」に「御」を付けたものかな。「漬物」は「おこうこ」、「味噌汁」は「おみおつけ」、「かぼちゃ」は「おかぼ」などと言う。

 この並びに「おこた」も入ってくるから、ワシャら庶民が使う言葉よりも上等と言ってもいい。

 てなことが、選者は判っていて選んでいるのだろうか、そのあたりが朝一番で「もやもや」したが、午前中が「おもやもや」だったので、更新が昼過ぎになってしまった。

 ちなみに「もやもや」は普通に使っているもやもやで、「おもやもや」は「多忙」の公家言葉でござりまする。「ござりまする」も「ございます」よりも丁重な言い方で、さらに上級が「あらしゃいます」となる。

 ことほど左様に日本語は多様で難しく、おもしろいのであった。