出逢い

 9月13日の日記

https://warusyawa.hateblo.jp/entry/2020/09/13/181239

で「ニャンコ哲学」のことについて触れた。今日は実際に『夏目友人帳』に触れてみましょう。まず・・・

 第1話である。『夏目友人帳』そのものに興味のない方もおいでだろうから、ストーリーを掻い摘んで。

 ドラマは、少年がなにものかから逃げているところから始まる。

「あの女はどこだ?」「あの女はどこへ行った?」という声が闇から聞こえてくる。逃げているのは夏目貴志(高校1年生)。主人公である。

 夏目は妖(あやかし)に追われている。そして妖から逃げるのに手っ取り早いのが神社とは祠とかの神域にあることも知っていて、そこに逃げ込む。その時に祠の周囲に張ってあった縄の結界を切ってしまう。これがニャンコ先生を封じた結界だったのじゃ。

 招き猫に封じられていたニャンコ先生は祠を破壊して現世に現われる。そこで貴志の祖母、夏目レイコのことを語るのだった。

「お前のようにあやかしものを目に映すことができた。それゆえ、人は誰も彼女を理解(わか)らなかった。彼女はいつもひとりだった」

 有能ゆえに、他者から理解されない。だからレイコは孤立を選び、孤独の中で生きていくことを選んだ。愛されなくとも人を恨まず、ときには人を助けた。孤高のレイコは妖にも人にも慈しみの心を持っていた。

 その孫が貴志である。そしてレイコを知る大妖(おおあやかし)のニャンコ先生(本名は斑)と出会う。導入部なのでいろいろな説明が入るけれど、緑川さんのシナリオがいいので、飽きずに読み進められる。ニャンコ先生はかなり強い妖であること。にも関わらず、ひ弱な貴志のげんこつパンチに負てしまうこと。招き猫であることから、猫じゃらしにも弱いこと。貴志がレイコの遺品として妖を縛った「友人帳」という名寄帳を持っていること。このために夏目は妖怪どもに「名前を返せ~」と追われることとなる。あるいは、多数の妖を支配下におけるために、「友人帳」を奪いに来るものもいる。ニャンコ先生もそのうちの一匹なのだが、貴志の死後に「友人帳」を譲り受けるという「契約」をして、貴志の用心棒となるのであった。そして・・・

「祖母に名前を縛られた妖怪たちは、ある意味祖母がお世話になった妖怪たちだから、縛った名前を返したい」

 ということになって、長い長いドラマが始まった。

 

 名前を縛られた妖(ひしがき)がいる。勝負に負けて名を縛られると、レイコが名前を呼んでくれることを、待つようになる。

「今日も呼ばないのかい?さみしい、さみしい、前よりもずっと・・・どんなに待っても名前を呼んでくれないなら、カエセ、カエセ!」

 名を呼ばないレイコを恨んだ妖だったが、孫から名前を返され、レイコの死を知らされて、「もういいのかい?もう一人でも平気かい?」と優しく問うのである。それに貴志はこう答える。

「祖母はたぶん・・・けして独りではなかったよ。ありがとうひしがき」

 

「出逢い」というのが第1巻のテーマであり、夏目貴志ニャンコ先生が出逢ったのである。そして、ワルシャワニャンコ先生の謦咳に接したのもこれが始まりであった。

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 ※この写真は、近所の「ファッションセンターしまむら」で買った「ニャンコ先生」の長座布団カバーなのであった。それを鴨居に引っ掛けて暖簾のようにして使っているのじゃ。