いい飲み会

 夕べの飲み会が楽しかった。

 それを書く前にちょっと情報をアップしておく。「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展」の経緯である。この脳外科の先生が書かれた記事がまとまっていて、なぜ大村愛知県知事がダメなのかを解りやすく書いておられる。

https://ameblo.jp/nsdr-rookie/entry-12604329511.html

 高須院長がリコールに踏み切らざるをえなかった理由がスラスラと腑に落ちましたぞ。「昭和天皇の写真を燃やし、灰になったものを踏みにじる映像作品」「若くして特攻隊として出撃し命を落とした若者を”間抜けな日本人”とした造形作品」という日本人、日本そのものをヘイトするような作品群を展示したこと。さらに公金をだまし取って実施したこと。その総責任者が大村知事であるにも関わらず、まったくことの重大性を認識せず、県民への説明からは逃げ回り、そのことを指摘した名古屋市に対して訴訟を起こすという暴挙を起こしたことなどなど、これだけやっちまったら知事は辞めたほうがいい。

 ワシャは大村知事のもっとも強固な地盤のところに生活圏をもっている。だから周囲を見ると、熱狂的なシンパが多い。ワシャのよ~~く知っている(笑)市議会議員は、やはり真っ直ぐな男で、一連の下品な大村知事の行動を嫌がって、知事の忘年会を欠席した。そうしたら地元からの突き上げがもの凄かったそうな。

「次の選挙は出ないんだね」

「大村知事の応援は受けられないよ」

 と、大村シンパのオバアサンから白い目を向けられたという。でもその議員、魂を売ってまで選挙応援をしてもらおうなんて思っちゃいない。

「ああけっこうです」

 と答えると、憤慨して帰っていかれたという。おそらくこのバアサンに代表される大村シンパには、高須先生の声は届くまい。届かないというか理解できないのである。

 高須先生は、郷土愛を多量に持った人である。その高須先生が、碧南市で生まれて、地元の西尾高校を卒業した知事を応援しないわけがない。しかし、高須先生には人を見る目がある。一度会えばその正体を喝破されたに違いない。

 ただ盲信する信者にはなにも見えない。あの麻原彰晃ですら、信者には色男に見えるんだから(笑)。

 

 いかんいかん、「あいトリ」の話で盛り上がってしまった。昨日のいい飲み会の話だった。

 

 その前に、漫画の話をひとつだけ。今、昔のコミックを読み直している。かわぐちかいじ『ZIPANG深層海流』(講談社)である。これがいい。12世紀半ばに武家が台頭し、平治の乱平清盛が権力を掌握する。そこから「平家にあらずんば人にあらず」の全盛期があり、「おごれる人も久しからず」で、平家が壇の浦に消えて、その後に源頼朝が幕府を開く頃までを描く。

 かわぐちかいじの描くキャラクターはどれも魅力的で、幼き頼朝、義経は貴種としての威厳を兼ねながらも可愛らしいし、清盛も義朝も格好いい武将である。常盤御前も徳子も妖艶で可憐だ。

 とくに好きなのが、5巻に登場する武蔵坊弁慶である。こいつがなかなか強かな破戒坊主として描かれている。まぁ日本史のスーパーヒーローの一人には違いないんだけど、かわぐちさん描く弁慶はさらに魅力的だ。

 京の五条の橋の上、大のおとこの弁慶が、長い薙刀ふりあげて~、のシーンで、弁慶が泣く。これがいい場面だ。男が泣く、それも豪傑が泣くのは美しい。

 

 ここでようやく昨日の飲み会の話となる。1年くらい前のことになる。たまたま、駅前の歩道を流星号で走っていたら、凸凹商事のOBの方とすれ違った。自転車を停めて挨拶をすると、「おうおう久しぶりだな」と応じてくれる。その人(Yさんとしておく)は、ワシャが凸凹の社外役員になったことを寿いでくれて、「また飲もう」と言ってくれた。

 Yさん、現職の頃から豪傑だった。ビールしか飲まないが、なにしろ宴席好きで連日連夜、仕事が終わると街に繰り出していく。それが原因で、奥さんに離婚されたという強者である。半年くらいして、Yさんと仲のいいOBから連絡があり、「Yさんからワルシャワ君も誘えと言われたんでね」ということで飲み会の日時を伝えてくれた。しかし、残念なことに、その日別の宴席が入ってしまっていて、「申し訳ありません。かぶってしまいました」とお断りをした。

 それから半年が武漢ウイルスで潰された。宴席が徐々に解除され始めた5月末に、またOBから連絡があり「Yさんと飲もう」と誘われた。今度は空いていた。前日、前々日と宴席があり、3日連続となるが躊躇なく予定に入れた。

 飲み会は郊外の焼肉屋で行われた。参加者はYさん、OB、ワシャ、それに現職の次長と課長(この2人が幹事ね)、OBのゴルフ仲間の女子社員という6人で鉄板を囲んだ。

 Yさんがのっけにワシャに言った。

「ワシャくん、ありがとう、退職して15年も経つと、みんななかなか相手にしてくれなくてねぇ。きみが来てくれてよかった」

と握手を求められた。

 それから、Yさんは胸のポケットから「のし袋」を出すと、次長に手渡す。次長は「なにこれ?」というような顔をしている。

「おお、お前の次長昇格祝いが出来なかったんで、気持ちだけだけど・・・」

 と、表情を変えずに言う。

「あ!」

 次長の表情が変わった。クソ武漢ウイルスのせいで、歓送迎会やお祝い会が一切できなかったのであった。次長もこんなところで飲んでいる男である。宴席好きには間違いないのだが、それがまったく3月以降、なにもできなかった。もちろんYさんとの席もなかった。

 ううむ、Yさん、次長への昇格をずっと心に留めておられたんですね。そんな繊細な人物には見えなかったんですがねぇ(笑)。

 Yさんの言葉を聞いて、次長は目頭を押さえて、後を向いた。感激して涙が出たらしい。そんなことで泣くような男じゃないんですけどね。どちらかというと弁慶のような豪傑タイプの男で・・・ああ、五条大橋で弁慶も泣いていた。「そうか、豪傑は泣くのだな」、ちょうどその前日、『ZIPANG深蒼海流』の5巻を読んでいたので、そのことを思い出した。

 のっけからいい話で始まった宴は、ずっと心がほっこりして楽しい時間となった。