ご近所で融通?

 2月29日の日記

https://warusyawa.hateblo.jp/entry/2020/02/29/085445

に「トイレットペーパー」の買い占めについて書いた。上品に「トイレットペーパーはなくならないから買い占めに走るな!」と言っていた。「ケツなんか水で洗って天日干ししとけ!」とかね。

 今月号の『波』(新潮社)に、精神科医斎藤環氏と歴史学者の與那覇潤氏の対談が載っていた。お題は「トイレットペーパーはなぜ消えたのか?」で、今回の武漢肺炎にからむ「ケツ紙騒動」を分析している。

 

 その話に入る前に、ワシャのマスク事情を話そう。マスクについては、運がよかった。たまたま花粉症なのでシーズン入りする2月前には100枚はストックしておこうという生活を30年来している。だから年末に、100枚/500円くらいのときに入手していた。その後、作家の百田尚樹さんからの「マスクなくなりまっせ」の警告に触れて、買い増そうかなとも思ったけれど、100枚あれば1シーズンしのげると思って追加では買わなかった。百田さんの予測は当たって、その後のマスク狂騒曲は周知のとおりである。

 でね、ワシャは100枚のマスクを半年でどのくらい使ったかというと、15枚だけだった。いつもの年よりも少ない。まだ、85枚が箱に入っている。なんでかというと、マスクをそれほど装着しなかったということと、無くなった場合を心配して14枚のサージカルマスクを煮沸消毒して使いまわしていた。この2点が大きい。「3密」などと大騒ぎをしたが、花粉シーズンが終わってからワシャは基本的に人と接する場合でなければマスクはしなかった。マスクを飛沫防止だと確信しているからね。人に飛沫を浴びせる可能性のないところではマスクは着けない。装着したマスクは1週間ためておいて鍋で煮て干しておく。干し終ったら低温でアイロンをかけて古雑誌の中に挟んでおくと新品同様になるんですね。

 また、たまたま行った有松で絞りのお店に、お洒落なマスクがあったから、カラーコーディネートにちょうどいいと思い茶色とブルーの手縫いマスクを購入した。

 その上に、ワシャお手製のマスクを使っている。ワシャは「キョンシーマスク」と呼んでいるが、人は「褌マスク」と言う。100均の「ハットクリップ」2つと手拭いで作った優れものである。これは目の下からマスクサイズの四角い布を垂らすというもので、強く吹くと暖簾がめくれるようにひらひらとはためくのだ。これは抜群に涼しい。そんな感じで遊んでいたので、あの支那人ぼろ儲けのクソ高いマスクは買わずにすんだのだった。めでたしめでたし。

 

 ずいぶんと回り道をしてしまった。斎藤氏と與那覇氏の対談だった。與那覇氏、今回のケツ紙騒動を《社会全体に他人を見下し、互いを信じない風潮が広がっていることこそが、真の問題だ》と難しいことを言っている。これをうけて斎藤氏が《「情報」はあるけど「対話」がない。対話をする機会や空間がないから、「もし足りなくなっても、近所でちょっと融通し合えば大丈夫だろう」という発想が出てこずにパニックになる。》と言っている。

 2人の対談は要領を得ないのだけれど、パニックを起こすのは、人を見下しているようなヤツが「バカが買い始めると在庫がなくなるから、そうならないうちに買っておこう」と思うからであり、そんなものはご近所が仲が良ければ起きないと、ずいぶんと楽観的なことをおっしゃる。

 

 平成5年の冷夏で日本全体の米が不作となった。あの時に、さすがに非農家のワルシャワ家では米が尽きた。しかし国産米がなくなったからといって長粒のタイ米を食うのも忌々しい。トム・ヤム・クンやムーワンと食べるなら、それでもよろし。しかし、納豆や明太子と長粒米が合うかってんだ。

 でね、スキーの先輩に仲のいい人がいて、その人が農家だったので、恥を忍んで「先輩、10キロほどでいいのですが分けていただけませんか?」と頼んでみた。さっきまで、「不作だけど家には米がある」と言っていたのである。そうなのだ、全国的には不作なのだが、辛うじて愛知県南部のあたりはなんとか日が照って収穫もあったと聞いている。ところが「あ、無理」とにべもない返事。

 結局、その年は、意地でも長粒米を買わずに、パンや麺類でしのいだのだった。そして仲の良かったと思っていた先輩とは徐々に縁遠くしていった。

 

 残念ながら斎藤氏の言うように、近所で、あるいは知人に融通してもらうというのはかなりハードルがある。親族というのなら別でしょうけど、「対話」をすれば「クソ紙パニック」が解決するなどと思っているのは、机上の空論と言っていい。世間の風は冷たいのである。結局は自分の才覚で、人に頼らず生きていく算段をしておかなければならない。それは買い占めることではなく、工夫をして生き残ればいいということ。「近所と融通」などという依存心は持たぬことが肝要である。しかし、頼ってくればワシャは助ける。テメエのケツを天日干しにしてでも、頼まれればトイレットペーパーを融通したい。マスクもしかり。それなりのお付き合いのある人には、ワシャの褌マスクを進呈しよう。要らないと思うけど(笑)。