藤原正彦名言集

 以下は『本屋を守れ』の中にあった名言を。

〇いじめの問題は古来、日本にある「卑怯を憎む心」や「惻隠」などを子供の心に深く浸み込ませればほぼ解決できるのです。

〇人間の判断力は、自分の経験を通じても形成されるけれど、いかんせん一人の人間の経験は限られている。そういうなか、唯一、時空を超えさせてくれるのが読書なのだ。

スマホの最大の罪はまさにこの一点、「読書の時間を奪っていること」に尽きます。

 

 藤原先生は、最近の若者たちは、SNSなんどのコミュニケーションで「了解」の返事を「り」一文字で済ませることを糾弾している。たった一文字の返事は会話などではなく「反応」に過ぎないと指摘して、こう言われる。

〇「人間は思考の結果を語彙で表しているばかりではない」ということ。「語彙を用いて思考している」ということです。

グローバリズムすなわち新自由主義は、帝国主義共産主義と同じく、人類を幸福にするものではありません。

 まさに、先生の仰るとおり、グローバリズムの災禍として「武漢肺炎」があって、何十万人もの人が命を落とした。さらに言えば、今、生きている人たちを恐怖に陥れている。グローバリズムは、帝国主義共産主義と同じように危険だ。

 

〇「情報がつながること」が知識であり、さらに「知識がつながること」が教養。

〇情報というのは「知識」や「教養」まで高めなければ使い物にならないのであって、三者の間には隔絶した違いがある。情報を知識、教養にまで高めるには、結局のところ本を読むしかない。

〇読書時の脳の働きが、人間の教養を育む。

〇わが国が西欧列強の植民地にならなかったのは、幕末から明治にかけて来日した外国人が、町人たちが本屋で立ち読みをしているのを見て震撼したからです。幕末には江戸に八〇〇軒、京都に二〇〇軒もの本屋があったそうです。

 

 凄いっすよね。800軒ということは江戸八百八町にすべて本屋が存在していたってことでヤンス。もちろん武家武家で、それぞれの藩邸には本蔵があって、その蔵書を誇っていた。小さな旗本だって書斎に本を積んでいた。つまり地球上で日本だけ国中津々浦々まで本が浸透し、識字率が90%を上回っていたんですね。

 このことに幕末に日本にやってきた欧米人は驚愕した。

「なんなんだこの土人たちは!」

 極東の土人国家と思っていたジパングは、自分たちよりもはるかに知識と教養をもつ連中だった。こんなところを植民地にできるわけがない。結果として、欧米は日本列島を植民地にできず、さらに言えば、コミンテルンの罠によってアメリカと対峙するまでは、欧州の国との戦争は連戦戦勝となった。

 ただ先生の表現をお借りすれば「ケダモノのような顔をもつ将軍たち」が頭角を現すようになって国が壊れた。要するに教養のない記憶力エリートたちのことね。こいつらの発生を防いでいれば、日本はアメリカにも勝っていたかもしれぬ。

 

〇人生に必要な教養を身に付けるべく、文学や歴史を読まないと

〇現在の政治家は学歴秀才が多く、論理的思考で突っ走る人が多い。しかし論理的思考が正しくても、出発点を間違えれば結論も必ず間違いとなります。論理と同等かそれ以上に重要な、出発点を選ぶ力が「情緒力」です。

 

 確かに。

 この間もとある行政マンと話をしていて「一度決めたことを間違っていたと認めることは困難です」というセリフを聴いた。それが行政の「無謬主義」によるもので、その最たるものが大東亜戦争当時の軍部の判断につながる。一度決めた作戦は、どんなことがあっても過ちを認めない「無謬主義」がどれほどの屍を並べていったことか。

 つまり、そこのところは根底では同じだ。自治体が、過去の過ちを認めず「無謬である」と言った瞬間に、陸軍参謀本部になる。いくら論理的思考で進めてきたことでも、そもそも出発点が誤っていることは10年議論しても収束するものではない。

 

〇人は何歳であっても、良書を読むことで瞬時にもう一段、高い境地に達することができるのです。

 

 ううむ、日暮れて道遠し。だけど、月明かりがあるから本でも読みながら歩くことにしようっと。

 

 藤原先生は、山本夏彦さんの言葉を引いている。

「三人寄れば文殊の知恵は嘘だ。バカが三人寄れば、三倍バカになる」

 陸軍参謀本部は、陸軍士官学校のトップばかりを集めて編成し、まさに日本国を破滅の際まで追いつめる結果となった。教養のない陸軍エリートは何人集まってもバカはバカだった。

 山本さんの話まで拡大すると本論から逸脱してしまうので、この程度で納めておくけれど、なにしろ藤原先生の新著はおもしろかった。おもしろい人の書く本はなにしろためになる。今度は、山本さんの本を再読してみるか。