徳勝龍おめでとう

 大相撲初場所は、幕尻の徳勝龍が14勝1敗の好成績で優勝を果たした。幕尻というのは、ケツの下は十両で、2場所も負け越せば、無給の幕下という力士養成員の立場に落ちる。そんなところから優勝をするというのは簡単にできることではない。徳勝龍の前は20年前の貴闘力と言うから、快挙と言っていい。

 

 徳勝龍、平成21年の初場所初土俵であった。入門以降、本名の「青木」で土俵に上がり、すぐに幕下まではいったのだけれど、幕下上位で足踏みをした。十両に上ったのは、初土俵から18場所目、3年もかかっていた。十両でも10場所も長居をして、幕内に上がっても、下位で10場所も滞留をしている。かなりののんびり屋さんだ。自身の最高位の前頭4枚目に進んで、今度はそのあたりでうろうろとしている。そしてまた2年後には十両に陥落する。一旦は持ち直したのだが、平成29年に3度目の十両落ちをすると、そこからは十両12場所をつとめる十両力士となった。

 先場所も十両だったんですよ。筆頭とはいえ8勝7敗で、辛うじての勝ち越しで4回目の入幕を果たすという薄氷を渡るような際どさであった。それが明けて初場所、幕尻でこの大活躍、いやー驚きました。14勝の優勝に言うことなし。

 

 しかし、協会には言いたいことあり。徳勝龍の優勝には1ミリも文句はないが、協会、とくに取組編成会議には注文を付けたい。正代は前頭4枚目で大関2、関脇2、小結2と上位陣と当たっている。だが、徳勝龍の場合は千秋楽で貴景勝と当たっただけで、少なくとも前頭7枚目以上の力士とは、優勝を争った貴景勝と正代以外に取り組みはなかった。ここは、11日目の9勝1敗の時点で、前頭8枚目4勝6敗の碧山と取り組ませるのではなく、もっと上位陣との取り組みを持ってこなければいけない。遠藤でもいいしさ、関脇・小結もいる。そのあたりと2~3番やらせていればさらに土俵が盛り上がった。もちろん今の徳勝龍ならそれらにも勝って優勝を決めただろう。

 遅咲きかもしれないが、今の徳勝龍の体を見ていると、まだまだやれそうな気がする。弟弟子の宇良も序二段で優勝をした。復活の兆しを見せている。ぜひ兄弟そろってがんばって欲しいものだ。

 

 それにしても徳勝龍の優勝は感動した。不良横綱が予定調和のように優秀をするのにはもう飽きた。優勝インタビュー後に万歳したり三三七拍子をするのも不快だ。バカ横綱以外が優勝して、それぞれの相撲人生の機微が伝えられると、諸々の感動がわいて、これがまたうれしいし楽しい。同様のことを解説の北の富士さんが言っておられたので、誰しもがそう思うのだろう。

 徳勝龍、優勝インタビューで「自分なんかが優勝していいんでしょうか?」と応じて、会場の相撲ファンをわかせていた。

 正代戦勝利のインタビューの際に「優勝を意識することなく」と答えたことに関連して「今日はどうだったか?」とアナウンサーに問われて。

「意識することなく・・・嘘です。メッチャ意識していました」

 と、また笑いを取った。

「昨日の、意識していないと言ったのも嘘ですか?」

 と、畳み掛けられると、

「バリバリ、インタビューの練習をしていました」

「仕切り前に水を飲みましたね?」

「喉がカラカラでした」

 国技館が大爆笑に揺れた。

 そして、話柄が場所中に亡くなられた恩師の話になると、ポロポロと涙をこぼしながら「監督が一緒に土俵に上がってくれていたと思います」と応じた。

 これには、会場もテレビ桟敷のワシャももらい泣きをしてしまったわい。

 弟弟子の宇良も序二段で優勝をした。復活の兆しを見せている。宇良の復活はうれしい。ぜひとも兄弟そろってがんばって欲しい。

 

追伸:出来の悪いやつのいない今場所はホントにおもしろかった。このままフェードアウトしてもらいたいくらいだ。