ガンバレ!天声人語くん

 今朝の「天声人語」。もう「天声人語」では慢性化していると言っていい「死亡ネタ」である。

 このことについては、作家の日垣隆さんが『エースを出せ!「脱言論の不自由宣言」』(文藝春秋)で、「死亡ネタ」を頻出させるのは「悪癖の集大成」とまで言い切っている。

 今日も今日とて、「きのう訃報が届いたシナリオライター上原正三さん」って、皆さんご存知ですか?

 日垣さんは言う。

スターリンチャップリンマリリン・モンロージョン・F・ケネディマザー・テレサ、ダイアナ妃。歴史的な死亡記事というものは確かにある。その死が若く突然であればあるほど、翌日の紙面はコラムニストにとって腕の見せ所だとさえいっていい」

カルロス・ゴーンが死んだ」とでもいうなら、「死亡ネタ」として腕を振るっていただきたいところだけどね。

 残念ながら、上原正三氏という方は「ウルトラセブン」、「帰ってきたウルトラマン」などの脚本を手がけた方ということらしいが、一般的にそれほどの知名度があるとも思えない。そして墓碑銘コラムを天声人語に刻むべきものなのだろうか。「ウルトラセブン」世代であるワシャですら疑問だ。マニアというほどではないにしろ、だいたいの作品をタイムリーに見ているが、天声人語氏が上原氏の紹介で、「帰ってきたウルトラマン」の《なかでも「怪獣使いと少年」の回は異色作として語り継がれている。》と言われてもねぇ。

 ワシャは上原氏の訃報にケチをつけているのではない。天声人語の「悪癖」を指摘したいだけなのである。

 おそらく天声人語くんは、ワシャよりも少し下の世代で、「帰ってきたウルトラマン」を見て育ったのであろう。そして、朝日新聞の記者になろうというほどだから「文芸畑」の人で、脚本や小説にも造詣が深いだろうことは間違いない。だから上原氏の訃報に反応した。そして己の中だけに墓碑銘を刻むために「天声人語」の執筆をしたというところだろう。

「起こし」で、上原作品としての「怪獣使いと少年」を出してきて、「承」で、本作の背後に「関東大震災朝鮮人虐殺」があることを紹介している。上原氏、安保闘争世代であり沖縄出身でもあるので、そういった傾向になるのも仕方ないでしょうね。

 そして「転」で《かじりつくように見ていて身には、独特の「暗さ」が記憶として残っている。(中略)いま思えばそれは、作り手たちが社会への憤りを投げ込んだがための「重さ」だったのかもしれない。》と言う。

 そうかなぁ、「ウルトラQ」も常に「暗さ」をまとっていたから、それと比べると「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」は随分と子供向けになっていたような記憶がある。

「結」では上原氏の晩年の小説を紹介しているが、「e‐hon」で検索したけれど、「2017年6月」出版だったが、「即日発送」ではなく「お取り寄せ」になっていた。もう書店の棚には挿していないということですね。

 天声人語くん、前日の社会面に載った訃報一本で「天声人語」を1回分埋めてしまった。上原氏の訃報を見た瞬間に「しめた!」と思ったんでしょうね。いやぁ下品だけどお見事。

 

 さらに畳み掛けておくと、上原氏の訃報の載った1月9日の「天声人語」の右には、恥ずかしげもなく「年の始めに新習慣 天声人語 書き写しノート 通常版200円+税」と広告を打ってやんの。

天声人語」を書き写すなどという愚挙を始めると、必ず文章力は落ちる。そして洗脳をされることも請け合いだ。書き写すなら、名文を書き写せ。世に上手と言われたコラムニストや随筆家は数多いる。よりによって「反日」にそまった朝日の「天声人語」をわざわざ写すことはないわさ。時間の無駄だ。