令和2年のご挨拶

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 

 さて、令和2年(2020)子年が始まりました。それではまずネズミをお題に一席お付き合いを願います。

  ネズミという漢字である。「鼠」と書くのは皆さんご存じのとおり。去年の正月は「猪」の異体字「豬」を分解して喜んでいたので、今年も「鼠」を分解してやろうと調べたんだけど、この字は分解できなかった。象形文字である。「臼」の部分が頭で、「雨」みたいな点々のところが胴体と足で、右側にはねているのが尻尾らしい。象形文字では、形がそのまま字形になっているから分解できまへん。

 では、ネズミの別の話をしよう。

 ワシャが凸凹商事の博物館関係の仕事をしている時に、地域の古民家から、古い木製の仕掛人形の残骸が1体発見された。それはもう木の部分しか残っておらず、衣装は朽ち、木の部分も擦り減っていた。そのものに対する書置きも、説明書きのようなものも一切残されていなかった。辛うじて手足が付いていたので人らしきものと判断した。その人形が、木枠で作られたレールの上に固定されていて、それが前後に動く仕掛けになっている。そしてこれが大きなヒントになったのだが、そのレールにネズミのような形の物体も付いていて、これもレール上を前後に動く仕組みになっている。

 どうにも困った博物館はからくり人形の企画展をやったことのある研究員にその人形のようなものの解明をするように言明したのである。しかし、その学芸員も、上記程度の情報量ではこの朽ち果てた木のガラクタが何であるかを特定するのは困難だった。からくり人形には違いない。しかし、それがなんのからくりだったのかが見当がつかなかった。

 そこで研究員に脳裏にある男の顔が浮かんだのだった。ヘンなことをなんだか知ったかぶっているワルシャワって野郎の顔だった。

 てなわけで、シャワロック・ワルムズの事務所に木のガラクタが持ち込まれたのだった。

「ワトソン君、ここを見てごらん。このネズミのような部分が動くと、こちらの人形も動くという仕掛けになっている。つまりネズミと人が連動して動くからくりということだ」

 ワシャは運のいいことに、この人形が持ち込まれるちょっと前に歌舞伎座だったか大阪松竹座だったか忘れてしまったけれど、「伽羅先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)という歌舞伎を見てきたばっかりだった。この狂言には、「足利家床下の場」という有名な場面があって、そこに荒獅子男之助と大悪人の仁木弾正の化けたネズミが登場するのである。江戸期のからくり人形は歌舞伎にその題材を取っているものが多い。そして、ネズミと人という組み合わせの人気狂言と言えば「伽羅先代萩」で決まりだ。

 シャワロック・ワルムズのこの仮説は、どこぞの研究紀要に載っているらしい。

 

 ネズミネタで出てくるのはこんな話だけでした。お粗末!

 

 今年は干支でいうと「庚子(かのえ ね)」である。「こうし」とも読む。「庚」も象形文字であったか。これは秋に万物がたわわに実がついたようすを形として著したものなのだそうな。「庚庚」は「こうこう」と読み、樹木がしっかりと実をつけた様のことを言う。もうひとつ、「横に筋が通ったさま」のことも「庚庚」で表される。

 筋の通った一年にしたいものですね。

この一年が、皆様にとって、令和2年が庚庚な一年になりますことをお祈りして、新年のご挨拶にかえさせていただきます。