山々亭有人(さんさんていありんど)

 昨日、午前中、某事務所で某議員と打ち合わせ。

 午後から新田次郎賞を受賞された作家の奥山景布子さんの講座が駅前の図書館であった。講座名は「古典芸能の楽しみ方」、全3回の連続講座で、2回目は「落語」だった。
ワシャは落語、歌舞伎、能など全般が好きなので、この講座はたまりませんぞ。今回は「落語」ということで、三遊亭圓朝から喬太郎志の輔の話も出てきて、落語好きにはたまらない話が2時間たっぷりと楽しめましたぞ。
 とくに知らない話が出てくるとワクワクしてくる。タイトルに出した「山々亭有人」なども、初めて知った人であった。この人、通常の人名事典には出てこない。もちろんワシャの棚にある『コンサイス日本人名事典』にも名前はなかった。『国史大辞典』にも人名項目としては載っていない。ただ、索引のところには「東京日日新聞」の項に、その名が記載してあった。《条野伝平(山々亭有人、戯作者、鏑木清方の父)・西田伝介(貸本屋番頭)・落合芳幾(浮世絵画家)三人によって創刊》とある。本名を条野伝平といって、あの鏑木清方の父に当たる人だったのか。
 この人たちが、三遊亭圓朝などと連携をして、明治政府の政策のせいで衰退を始める「落語」に歯止めを掛けるべくいろいろな働きかけをしていく。「三題噺」、例えば有名なところでは「鰍沢」なんかも、山々亭有人らの手によるものなのだそうな。
 鏑木清方の作品に「三遊亭圓朝像」がある。
http://bunka.nii.ac.jp/heritages/heritagebig/213779/0/1
 高座に坐って茶を飲む圓朝の姿が描かれている。こういったリアルな圓朝を見られるのも、山々亭有人の縁があってのことなんですね。
 以前、ボストン美術館だったか、名都美術館だったかは忘れてしまったが、そのどちらかで「三遊亭圓朝像」を見たことがある。その時は「ふ〜ん、鏑木清方圓朝を描いていたんだ」くらいにしか思わなかった。
 しかし、山々亭有人の存在が浮かび上がってくると、父親のところに通ってくる圓朝を見、あるいはその縁で高座を何度も観に行ったのかもしれない……というところまで思いがゆくと、急に「三遊亭圓朝像」に立体感が増すのであった。
 また『圓朝全集』を読んでみようかなぁ。