いい講演会

 昨日、刈谷市でいい講演会があった。市民大学の後期講座のひとつで、2人の講師が登場する。その初回が昨日で、まずは歴史コメンテーターの金谷俊一郎氏が登壇した。ホントはね、今週の月曜日に司馬遼太郎の再来と言われている磯田道史氏が先鋒として登場するはずだった。でもね、ご本人がインフルエンザになってしまって、その回は来月に延期になった。ワシャは磯田さんが狙いだったので、とても残念だったが、金谷さんのほうも、このところなにかと話題を作っている方なので(笑)、楽しみにして出かけましたぞ。

 まず、講演会の趣旨について触れたい。この市民大学は通常年も開催されていて、刈谷市はなかなかいい講師陣を連れて来ることで有名だ。過去には、櫻井よし子さんや勝谷誠彦さんなどの名前もあったと記憶している。例年であれば、市民の知的好奇心を刺激するために、いろいろな分野の講師を並べるのだが、今回は「歴史」に特化して磯田、金谷と並べてきた。これには理由があって、この3月24日に「刈谷市歴史博物館」がオープンするのに合せて「歴史」の講師の大駒を2枚揃えてきたのである。

 磯田さんが、時代的にもっともエキサイティングな「戦国」を鬼日向と呼ばれた水野勝成を絡めながら語る。そして、金谷さんが、「近現代」の自動車産業の発展について話したのが昨日であった。
 近現代の刈谷の歴史を再学習するのにはいい講演だった。とくにワシャのような門外漢にはいい勉強の機会になった。

 しかし、どうなのだろう。刈谷市刈谷市のことを語るのに、刈谷の近現代の偉人を並べて、その特徴的な年代について歴史的な事件と絡めて説明するというのは、刈谷の歴史に造詣のある方々にとっては少し物足りなかったのではないか。
 例えば、豊田喜一郎についての説明でも、小学生用に愛知県が作った『愛知に輝く人々』の「ひびけエンジン」に書いてあることばかりで、目新しい情報や、講師独自の見解のようなものは披露されなかった。
 それこそ司馬遼太郎から御園座の副社長の講演会まで聴いてきた講演会フリークとしては、この情報量の少なさはいささか物足りない。講演会に来たので、新情報を知ることができる……というお得感がないと聴衆は納得しないものなのである。
 この点ばかりは、予備校の先生の域を脱することができなかった。講義としてはよかったが、講演としてはもう一勉強したほうがいいだろう。
 話し方についても、これはこの人の癖なのだろうが、語尾を伸ばすことが多い。これは長く聴いていると耳障りになるので、せっかく笑点メンバーのような光沢のある青碧色の派手な着物で登場したのだから、落語の話術を学んだ方がいい。
 そして『日本国紀』の百田尚樹さんとのトラブルなんかも、知っている人は少ないかもしれないけれど、『日本国紀』は売れに売れているのだから、それに関わって、自爆した話なんかが受けたと思いますよ。

 そんなこんなを考えながら、とても楽しい時間を過ごせたのだった。