今日は何の日

 読売新聞の「編集手帳」のコラムニスト竹内政明氏が『「編集手帳」文章術』(文春新書)で、コラムの書き方でこんなことを注意している。
「第一感に従うなかれ」
 土用の丑の日に鰻の話題を取り上げるとする。のっけから鰻好きな有名人では王道中の王道の歌人斎藤茂吉の話をもってきて鰻を語ったりするのはマヌケだと言っている。よい例として竹内氏は2011年8月17日の「編集手帳」を記す。
《将棋のタイトル戦前夜、両対局者が立会人などを交えて会食をしたときという。故・大山康晴十五世名人は料理を一人前たいらげてステーキを追加注文し、それを食べながら「明日の朝は鰻がいいね」と言って、対局相手の内藤国雄九段をげんなりさせた。内藤さんが本紙で回想している◆大山さんがのちに講演で明かしたところでは大局前夜の宴席には常にわざと腹を空かせて臨んだそうで、旺盛な食欲も相手を圧倒する戦術であったらしい◆相手を呑んでかかるか、呑まれるか、勝負とは何によらず厳しいものだと、つくづく思う◆夏休みも終わり、きょうから仕事という方も多かろう。棋士ならぬ身にも、記録破りの猛暑という手ごわい相手が待つお盆明けである。夏バテから濁点をとれば「夏果て」で、夏の終わりを指す季語になる。夏バテが先か。ここしばらくが濁点と清音のせめぎ合う終盤の難所だろう。大山流でステーキも、よし。鰻、またよし◆…と、ひとをけしかけておいて無責任だが、〈炎天へ打ってでるべく茶漬飯〉(川崎宏)の句に心はひかれる。名人の足元にも及ばない。》
 このコラムの中に「鰻」は2カ所出てくる。出てはくるのだが、重要な大山名人のエピソードの中に小道具としてチラッと顔を出す。後段で暑い夏のことに触れて、そこで最後のオチに持っていく直前に「鰻」を出して、「でもお茶漬けだよね」とストンと落とす。土用の丑に大山名人と猛暑の話の中に鰻の匂い程度を漂わせている。これがコラムである。
 今日の「天声人語」なんですね(泣)。今日は1月17日で、ほとんどの人が「あの日だ」と頭に浮かぶ災害の日。担当者の「第一感」そのままに書き出している。
阪神・淡路での地震が起きた翌日のこと。「西宮市役所に到着して見たものは、被災者と市職員とボランティアが、区別もつかずに右往左往している光景だった」。ボランティアに駆けつけ、後にまとめ役となった伊永勉(これながつとむ)さんが書いている》
 書き出しがすでに直球で「阪神・淡路での地震が起きた翌日」で始まり、43字めには、「阪神・淡路大震災」といえば「ボランティア元年」と言われるぐらい「ド直球」のネタを持ってくる。前半にこの「ボランティア」が5回も連呼される。
 後段は、防災の備えについて語っている。「小中学校の耐震化が進んだ」「住宅の耐震化が進んだ」「慢心してはいけないがあの時とは日本社会が違ってきている」といいながら「まさかもよもやも許さないのが、この地震列島である。銀座でも起きる可能性がある。自分の住んでいる場所でもし起きたなら」と前置きをして、《想像を働かせる日にしたい。》というのがオチ。落ちたなぁ……天声人語

 天声人語ネタを2日も続けちゃって申し訳ありません。あんまり酷かったものですから。こんなのを8時間もかけて、場合によっては何日もかけて、適当に書いたら2000万円の年収がいただけるってんで、ありがた山のホトトギス、三日やったらやめられねえってか。