三人の久蔵

 落語に『富九』という噺がある。人はいいが酒癖の悪い浅草の太鼓持ちの久蔵が、旦那の家のある芝の火事に駆けつける。旦那の家は火災からは免れた。ほっとするのも束の間、今度はてめえっちのある浅草で火が起った。「すわっ」ってんで、また走って戻るんだが、自分の長屋は焼けてしまって……というようなドタバタ人情噺。

 これは古今亭志ん生の手の加わった噺で、これを考えたのが満洲慰問の最中だった。ヒントを与えてくれたのが、金栗四三の弟子の小松勝。日本のマラソン選手なんだから走りに関しての助言にはリアリティがある。志ん生は小松の助言をいれて、名作『富九』を創る。

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第39話が、このエピソードも挟みながらおもしろく仕上がっていた。なにしろ志ん生圓生満洲紀行の回で、時代背景は終戦前後の大混乱期、これをビートたけし演じる晩年の志ん生が語るってぇんだから面白れぇにちげ~ねぇ。若き志ん生森山未来)、圓生中村七之助)に関東軍から逃げてきた小松(中野太賀)が絡む。この3人を悪そうな支那人が襲ってくるし、ロスケは若い女をかっさらい、日本人と見るや、小銃を乱射するし、そいつらとの命をかけた駆け引きもスリリングだ。

 そんな逃亡生活の中、小松は日本に帰りたいという気持ちを紛らすためにウォトカを浴びるように呑んでいる。ぐでんぐでんに酔っぱらった小松を見て志ん生が「こいつ『富九』の久蔵みてえな野郎だな」と言った。

 

 その瞬間に、ワシャの脳裏にもう一人の久蔵、宮部久蔵が浮かんだのである。丁度、満洲の久蔵が、日本への思慕をつのらせ荒れ酒をあおっている頃、『永遠の0』に登場する宮部久蔵は九州の鹿屋にいた。そこで久蔵は、特攻機を直掩する任務に従事しており、若い搭乗員を敵艦まで監視・護送し、確実に特攻を敢行させるという辛い役目を担わされていた。もちろん鹿屋の久蔵はそのことに悩みやせ細っていた。人間、不本意なことをさせられると激痩せするものなんですね(笑)。

 

 北の満洲と南の鹿屋で、久蔵と呼ばれた男が悩みながら生き、悩みながら逝ったんだなぁ……と思ったら、NHK大河で泣いてしまったわい。これでは受信料を払わざるを得ないのう。

 

と、いい話で終わりたかったんだが、つまらない話が目についてしまった。見過ごすわけにはいかないので、怒っておくことにする。

 

 偉い人がとぼけたことを言っている。ボーッと生きてんじゃねえぞ!とチコちゃんに叱られろ。

トリエンナーレ補助金不交付、検証委座長「手続きがおかしい」》

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20191019-00000045-jnn-soci

 発言が偏っているね。なにがあったのかを検証する委員会でしょ?だったら補助金不交付の話ばかりではなく、あの忌まわしい「不自由展」という展示会で何が起きたのかを白日の下に晒さんかい。

 ワシャの周りでも、国レベルでも、同様な傾向が見られるのだが、一昨日、地元で飲んでいて、「あいちトリエンナーレ」の話になった。そうしたらね、共産党の人が「今回の大村はよくやっている」と言い出したのだ。酒の肴に、ワシャが「なにをよくやったの?」と話題を拡げてあげたら、滔々と語るではないか。それに保守系のメンバーが食いついて、宴席が盛り上がった盛り上がった(笑)。

 保守は河村市長と思いを同じくし、共産党は大村知事を称賛する。これで「表現の不自由展」の図式というか、カラクリのようなものが見えてくる。おそらく地元の共産党のオジサンが「不自由展」の開催に関わっていたとは到底思えぬ。ヒダリといっても、ほんとに地元に溶け込んだ普通の労働者である。しかし、そういった人たちから見ても、大村知事はヒダリに肩入れをしているように見えるのである。つまり左傾知事になったということ。このことはかなり重要で、だったらそれを全面的に打ち出してくれ。ジャーナリストの有本さんに「この人、信念がない」などと言わせずに、9条教のほうをガッツリと支援をしていけばいい。そして、「愛知の久蔵」と呼ばれる知事に……間違えた。「愛知の9条」だった(笑)。「愛知の9条」と言われるように、「私は革新県政を推し進めます」と信念を持って宣言していただきたい。

 前述の二人の久蔵に比べると、最後の久蔵(9条)はお恥ずかしいばかりですが……。