年一読書会 その1

 いやはやハードな一日でしたぞ。昨日のことですがね、午前中に駅前の図書館の副館長から呼び出しがあった。近隣自治体の首長が図書館に来るとのことで、一人で対応するのは気づまりなので「ワルシャワさんがお知り合いと聞いたので、同席してくれないか」という依頼があった。午後から、その図書館の3階の学習室で「読書会」をやることになっている。その準備もあるし、午前中には出かけようとは思っていたから、ちょっと早めにいくだけのことなので「いいよ」と快諾をした。

 その首長とは、20年来の友人なので、本用件よりも雑談に花が咲いた。広域連携の話、縄文遺跡の話、今上天皇の著作、地震災害について……などなど。あっという間に1時間半が過ぎて、首長は地元での老人会に顔を出さなければならないということで、そそくさと帰っていった。用件はちゃんと済んだのだろうか(笑)。

 

 昼食を済ませ、学習室の鍵を借りて、会場の準備を始める。準備と言ったって、8人ばかりのこじんまりとした読書会なので机をひし形に並べれば終わり。

 メンバーは約束の午後1時までに揃って、決戦のゴングが鳴り響いたのだった。

 課題図書は、徳仁親王『水運史から世界の水へ』(NHK出版)である。今回の課題図書は評判がよかったですぞ。ワシャ的には、令和元年でもあるし、お祝いの気持ちを込めて、この本を今年の課題図書に推薦した。これに何人かのメンバーが賛同してくれたおかげで、普通なら読まないこの手の本を完読することができた。

「文章の品がいい。『わたくしが』という言い方が好感が持てる」

 それはそれ、宮様の御講演録であるから、言葉遣いのよさ、品格というものがにじみ出てきますわなぁ。

「皇室の方が歴史というものを研究していいんだ」

 生物とか、植物とか当たり障りのない分野を研究するという印象だったけど、「水」というのはかなり政治的なものと言っていい。「治水」というものが国を治める根幹であろう。それに著者は「歴史」も詳しく研究しておられ、親王殿下の歴史観のようなものも垣間見えるようで、ちょっとうれしい。

「ご先祖様イメージというのがどの程度、意識の中にあられるのだろうか」

 ご先祖様というような軽いものではなかろう。日本歴史を背負ってきた皇統の重みは実感しておられるのではないか。

182ページ『天正遣欧少年使節』が出てきた。ちょうど推薦本として『クアトロ・ラガッツィ』(集英社文庫)を読んでいたので、本と本とがつながって、読書の素晴らしさを実感した」

 そうなんですよね。この本の初っ端の18ページに「明治用水」「碧海台地」「都築弥厚」の話が語られていて、ちょうど915日に配布された地元自治体の広報の特集が「明治用水」「都築弥厚」で、平成26年に皇太子殿下御夫妻が水源管理所をご訪問された際の写真も載っていて、めちゃめちゃタイムリーだったわい。

サヨクを自認しているチェリオくんは、「アマゾンの書評が、☆5か☆4である。ホントかいな。アマゾンが忖度をして悪い書評を篩い落としているのではないか」と懐疑的な(笑)論説を展開していたが、そんなことはないでしょう。

 ワシャ的には、「治水」「水運」「水災害」について、とても勉強をされていることが解って、また尊崇の念が強くなった。これだけの論を組み上げていくことは、生半な知識でできるものではない。真剣に研究をされている。

 そして、8本の講演録がまとめられているのだが、それがそれぞれ独立していながらも「治水」ということで、一本の流れとして収斂している。また、『万葉集』『兼見卿記』『吾妻鏡』から、吉村昭、ロバート・ゲラーまで読み込んでおられ、その裏付けの厚みがうかがい知れる。

 161ページの親王殿下(当時)のお言葉を引きたい。

東日本大震災の発生以来、水問題を手がける者として、また歴史を研究する者として、何かお役に立てないものかという思いもあり、この分野にも関心を持ちはじめました。》

 頼もしいお言葉ではないか。水問題を手がけていただける、歴史を研究していただける、そして日本国の安寧を祈っていただける、こんなありがたいことはない。

 

 課題図書の部を終わって、各自の2019年上半期推薦本の紹介に入っていく。ここでは怒涛のバトルが繰り広げられたが、仁義なき戦いについては、品のある話の後なので、少し遠慮をし、日にちをあらためることにする。