大村知事の黄昏

 昨日、愛知県内某所で大村愛知県知事の言い訳を聴く。

 津田大介氏や関係者からは、6月に展示内容の説明を聞いて知っていたと言っている。ただし「説明を聞いた」としか言っていない。「戦時売春婦像」「昭和天皇のご真影の焼却ビデオ」「まぬけな日本人の墓」の内容を聞いたとは明言していないので、そのあたりの逃げ道は用意している。元官僚だからね、後々、言質を取られないようにしているわけだ。

 内容は知っていた。その上で「これは止めてほしい」と、その場で申し入れたと言う。このフレーズも「何について」は明確に言わないので、聴衆は「おそらく話題になっている前述の3つの展示か?」と思ったかもしれないが、ここにも逃げ道がある。

 そして、やはり前面に押し出してきたのが「憲法21条」である。「止めてほしい」とは言った。しかし、津田氏をはじめとする「【表現の不自由展・その後】実行委員会」が展示をすると言って譲らないものを、自分は憲法21条をしっかりと遵守するものであるし、知事が止めたことを不服として訴えられたら敗ける、だから県知事とはいえ展示を止めることはできなかった、というのが言い訳である。

 ううむ、苦しいのう(笑)。

 アートだと言ったらなんでも拒まずに展示しなければいけないのか?ということである。少なくとも作品の選択権がトップの知事になくして、誰にあるというのか。

 いいですか、昭和天皇のご真影をバーナーで燃やし、それを最後に土足で踏みつけにする、このビデオのどこがアートなんですか?これが一般庶民の、例えばあなたの父親の写真だったら、あなたの祖父の写真だったらどうでしょう。ワシャなら、そんなことをされれば極めて不愉快ですし、そんなことをした野郎はぶん殴ってやりたいと思います。昭和天皇は、現上皇陛下の父であり、今上陛下の祖父なのですぞ。これをご覧になられたら両陛下は人として悲しいと思いますし、気分を壊されると思います。

 それに多くのまともな日本人が敬してやまない日本国の象徴だった方なのである。これをアートと称して毀損する津田はキチガイだし、それを知っていて許可したなら知事もその責任は免れない。

 さらに突っ込めば、憲法第21条「表現の自由」は、国家の検閲を禁じているものである。その証拠に、池澤夏樹憲法なんて知らないよ』(集英社文庫)の新釈「日本の憲法」の条文を引く。

《第二一条②国は検閲してはならないし、人と人が通信によって思いを伝えるのを邪魔してはいけない。》とある。あくまでも検閲をしてはいけないとするものは「国」なのである。「国家」の検閲を禁止しているのだ。まぁ、池澤さんを持ち出すまでもないですけどね(笑)。つまり、国家ではない名古屋市長は憲法違反ができるものではない。とくにその展示スペースを自分の行政区内に持っている首長なのだから、懸念を示すのは当たり前だ。

 さらに言うと、トリエンナーレ実行委員会の他に「【表現の不自由展・その後】実行委員会」というものが組織されていて、そのメンバーが以下である。

 

アライ=ヒロユキ

岩崎貞明

岡本有佳

小倉利丸

永田浩三

 

 これが錚々たるつわものぞろいなのだ。

 アライ氏は、「赤旗」常連の美術評論家、とくに天皇を批判的に扱ったモノを得意としている。岡本氏は「週刊金曜日」で反日論評を展開する編集者。小倉氏がこれまたとんでもない人物で、これをご覧くだされ。

http://han.ten-no.net/?p=580

 多くのまともな国民から愛される今上天皇を「完全否定」する「極左」思想集団ですぞ。共産党よりも左に逝ってしまった集団の開催するシンポかなにかで演壇に立っている。こんなのが、メンバーの委員会ってどうなんだろう。最後の永田氏、これがまた大物だ。2001年にNHKで「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」という番組を作ったプロデューサーだった人で、ありもしない「性奴隷制」をでっち上げ、それで昭和天皇を有罪にしたといういわくつきの人物で、おそらくこの人が今回の黒幕ではないかと言われている。この人が、阿呆な津田を操って、お調子者の知事をたばかって、あれほど酷い「展示」を3日と言えども、実施してしまった。

 恩恵を被っている愛知県民は苦笑しながら眺めているのかもしれないが、全国的な論調は、大村知事に批判的である。

「内容もわからずに批判をするな、検証委員会がしっかりと調査し、その内容を情報公開していく。それから批判をしてもらいたい」

 時間稼ぎだろうか。まぁ当選して間もないことだから、審判が下るのは4年先であると多寡をくくっているのだろう。しかし、ここは早い段階で説明責任を果たしておかないと大きな傷となる。

 少なくとも昨日の「言い訳」では説明責任は果たされておらず、今、愛知が元気がいいだけに、知事の言説が与える影響が懸念される。善処を求めたい。そしてこの事件が黄昏にならないことを祈る。