津波災害を考える

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 上記は、今上陛下が親王殿下であられたときに上梓された御著書『水運史から世界の水へ』(NHK出版)である。心身を清め拝読いたしましたぞ。

 この御本は、今上陛下が昭和62年に行われた御講演から、平成30年にブラジリアでの基調講演にいたるまでの、水上交通史、水災害を含む水問題についての記録をまとめてある。

 ワルシャワ風情がものを言っては失礼にあたるけれども、読みやすくためになった一冊でございましたぞ。

 とくに第7章の「水災害とその歴史」、副題に「――日本における地震による津波災害をふりかえって」は、地震や災害に強い関心をもつワルシャワにはとても参考になった。

 陛下は、東日本大震災に触れられ、補足で「災害の記録や教訓を後世に伝えていくことや、地域全体で事前災害に備えることの大切さを強く感じました」と仰られておられる。

 そして古代の貞観地震から、中世の正平地震にともなう阿波・摂津の津波被害、明応地震に引き起こされた東南海の津波被害、これなんかはモロに南海トラフで発生した地震によるものです。

 陛下は、古い文献資料をひも解かれ、明応地震により伊勢湾岸や浜名湖周辺に甚大な被害が出たことを指摘しておられます。

 陛下は仰られます。「歴史に学びなさい」と。「私たちが来たるべき災害に対処する意味でも、災害に遭った経験を忘れることなく未来に語り継いでいかねばならないと思います」とも。

 平成から令和に代わって、最初に注文したのがこの御本であり、身を清め、姿勢を正して読んだのも、この御本ばかりであった。