ワシャの書庫の中ではもっとも古くからある本の一冊である。
『古代の英雄たち』(偕成社)、「少年少女/日本史物語」(全8巻)の第1巻で、発行日は昭和42年11月31日とあるから、出版された端に父親が買ってきてくれたものだろう。クリスマスプレゼントだったような記憶があるなぁ。
この1冊は、その後のワルシャワ少年の読書傾向に影響を与えた。ワシャの歴史好きもこの本から始まっているといっても過言ではない。
さて、第1巻で取り上げる古代の英雄たちは、ヤマトタケル、聖徳太子、中大兄皇子、阿倍仲麻呂、吉備真備、鑑真、菅原道真、八幡太郎義家などである。神話の時代から平安末期までを大雑把にまとめているが、まあ小学生対象の本なのでその程度でいいと思う。子供たちに、歴史に興味を持ってもらう本としては良くできた本だと思っている。この本は前述した英雄たちの脇役として、やはり古代史を彩った人物たちが登場する。
平将門である。この本では将門は「悪役」として登場する。関東を簒奪した謀反人という位置づけである。朝廷の地方官の藤原秀郷が将門を訪なうシーンを引く。
◇◇◇
将門が猿島に王宮をつくって、国王きどりでいばっているときいて、
「どんな男か、じかにあって、正体を見きわめてやろう」
と、猿島まででかけた。
将門は、おりから髪に櫛を入れているとことであったが、秀郷がやってきたときいて、
「それでは、おれの味方になるつもりだな」
と、大よろこびで、髪の手いれもそのままにして、
「いや、よくおいでになった。ゆっくりとお話がききたい」
と、たいへんなきげんで、秀郷といっしょに食事をしたが、ごはん粒がこぼれおちたのを、あわててひろって口へいれたのを秀郷が見て、
(そそっかしい男だ。これでは、とても天下をおさめることはできまい)
と、見ぬいてしまった。
◇◇◇
というようなエピソードが挿んである。
この後、秀郷に裏切られ、油断していたところを攻めたてられた将門は討ち死にする。子供心に、この将門と秀郷の経緯を見ていて、軽率だが、人を信頼することに篤く、野心もあり、部下たちのことを思いやる将門に悪い印象はなかった。むしろ、京で怠惰な生活をおくっている平安貴族に嫌悪を感じたものである。
昨日、NHKBSの「英雄たちの選択」で平将門が取り上げられていたので、上記のことを思い出した。
その中で、将門が「左遷の神様」だということを知った。おもしろし。