夜、ワシャは布団に入ると必ず本を読む。だから布団の周辺は本だらけである。防災上のこともあるから、寝室には本棚を置いていない。本棚がないから本はすべて畳の上に平積みとなっている。その数、300冊。それが毎日少しずつ入れ替わっていく。夕べというか枕灯を消したのは、深夜0時を回っていたので今朝ということになるが、その時に読んでいたのは、『近世風俗史(三)』(岩波文庫)だった。
これがちょっと厚い文庫で、片手で持っていると指にいささか負担が大きい。だから、両手を布団から出して、両手で支えて読んでいる。そうするとね、肩が寒いんですわ。ワシャは冬でも足は布団から出して寝ているのだが、肩が布団から出て冷えてしまうと、とたんに眠れなくなる。なにしろ肩は暖かくなければいけないのだ。ところが「布団にもぐって本を読む」と「布団で肩を温める」が両立しない。本は読みたし、お肩は寒し……このためにいろいろと試してみましたぞ。
まず、やったのが「いろいろと着込んで寝る」ということ。ワシャは秋口までTシャツ1枚が寝間着なのだが、寒くなってくるとその上にトレーナーを着る。それだけだと布団から肩が出ると、めっちゃ肩冷えがするので、フリースをその上から重ねてみた。これでもまだ寒い。まだその上にセーターを着たが、室内の温度が10度くらいだと効果は薄い。最終的に古くなったオーバーまで着込んで、ようやく布団から出ている両手が寒くなくなった。これだけ着込んで寝ると、ヒマラヤに行った夢を見てしまう。布団の中で着ぶくれしているので、寝心地が悪く、寝ながら服を脱いでいたりする。朝になるとTシャツ1枚てなことが往々にしてある。
別なことを考えた。
「部屋を暖かくしておけばいいじゃん」
ということで、エアコンを入れて寝ることにした。おおお、これは暖かい。室内温度を23度くらいにしておくと部屋に入った時に暑いくらいだ。でもね、これも弊害があって、部屋が乾燥してしまうのである。朝になると鼻や喉がカンピンタンになってしまう。時には喉の痛みなども出てきたので、温度を下げて、加湿器を導入してやっている。
他のことも考えた。
「電気毛布で肩を温めよう」
ということで電気毛布を敷いて寝てみた。確かに肩は暖かい。しかし、足元も熱くなって、ワシャは足が熱くなると寝られないので電気毛布を引っぺがした。
最終的にたどり着いたのが、電気ひざ掛けだった。電気毛布と比べると丈が短いのでちょうど肩から腰くらいまでしかなく具合がいい。これを端が肩に掛かるくらいにしておくと肩が暖かく本を読んでいても寒くなくなった。
昨日、三重テレビで「開運!なんでも鑑定団」の再放送があった。午後9時半ごろに帰宅したので、その後半に間に合った。その日の最後のお宝は「掻巻(かいまき)」だった。夏目漱石の文章を引用して「掻巻」を説明していたが、ボーッとしていたので、どの小説なのか随筆なのかは聞き洩らした。今、調べてみると「坑夫」という小説に「掻巻」が出てきた。
《戸棚に這入ってる更紗の布団と、黒天鵞絨の半襟の掛かった中形の掻巻が恋しくなった。三十分でも好いから、あの布団を敷いて、あの掻巻を懸けて、暖たかにして楽々寝てみたい。》
「鑑定団」では江戸期の文献の「守貞謾稿」も引いて説明していた。ふふふ、ワシャの書庫には『近世風俗志(守貞謾稿)』(岩波文庫)全五巻もあるのであ~る。だから、布団の中で『近世風俗志(三)』を読んでいたんですわ。
そこにはね、《遠州以東江戸は、大布団を用ふは稀にて夜着(掻巻のこと)を用ふなり。敷布団は京坂と同製なり。》とある。ふ~ん、江戸期に江戸では掻巻を寝具として使っていたんだ。そういえば熊さん八っあんも掻巻を使っていたっけ。
昔の掻巻とはちょっと違うけれど、現在のはこんなのですわ。
よし、これを入手するぞ。