図書館の思い出

 ワシャは高校時代に図書館を頻繁に利用していた。「え?悪(ワル)シャワが図書館??そんなバカな」と言うことなかれ。ワシャは高校3年の夏に一念発起して、受験勉強を始めたのだった。そのためには図書館の静かな環境はうってつけだった。
 その図書館は、2F建てで、図書室、学習室としては2Fがメインだった。学生が多くたむろしていたのは、もちろん2Fなんだけど、ワシャがもっぱら勉強していたのは、2Fではなく1Fの新聞閲覧室のほうだった。ときには2Fも使うんですよ。でもね、どちらかというと1Fの新聞閲覧室のほうがレギュラーポジションだった。
 池のほとりの静かな図書館だった。そこでワシャは猛勉強した。いやいや、ぼう勉強……ぼうえん強……ぼうえんきょう……望遠鏡をするのだった。なんのこっちゃ。
 新聞閲覧室で新聞のラックから3〜4mくらい離れたところからひたすら新聞を読むのである。要するに自分の目を望遠鏡にする訓練をしていたのだ。訓練というのは怖ろしいもので、あの頃のワシャの視力は3.0とか4.0あったのではないだろうか。おそらく大東亜戦争で海軍に志願していたら、間違いなく偵察要員になりマストの先で水平線を見つめていたことだろう。
「なにが受験勉強だ」と言わないでね。人それぞれいろいろな形態の勉強方法があってもいいじゃないか(笑)。おかげでワシャは時事ネタにめちゃめちゃ強い高校生になっていた。
 この猛勉強には集中力が必要だ。だからワシャは周囲がうるさいと、オジサンだろうとオバサンだろうと「静かにしてよ」と注意するのだった。もちろんふざけたちゃらい高校生が大声でしゃべっていれば「じゃっかあしい!」と一喝する。いつも1Fの新聞コーナーで恐そうなニーチャンが睨んでいるんだもの(睨んでいたのは新聞だったけど)、中途半端な不良は図書館に来なくなった。本格的な不良はそもそも来ないので、静かな環境が保たれたということである。
 図書館の静謐を、縁の下で(新聞閲覧室だったけど)守っていたツッパリ高校生がいたということなのである。