テスト期間中ということで、図書館のフロアが3層あるのだけれど、そこが学生であふれていた。その図書館、基本的に飲食、おしゃべりが許容されている。ただし、上層階の奥には個室も用意されていて、静謐な空間を希望する利用者には、そのスペースが予約できる。大人や、勉学に励みたい子供は、そちらで勤しんでいる。
勉強もだけれど、合間合間に友達との会話を楽しもうという子供たちは下層のフロアにあふれている。
そんな混雑した中、中学生の女子グループと高校生の女子が隣り合わせの席になっていた。高校女子は教科書とノートを机の上に広げて勉強をしていた。隣の中学女子どもは休憩なのだろうか、お菓子を食べながらワイワイと騒いでいる。かなりうるさい。高校女子が堪りかねて「静かにして」と言った。そうしたら中学女子の1人が「うるせいババア」と応じた。言われた高校女子は真面目そうな子だったので、少なからぬショックを受けていたようだった。
すぐにフロアスタッフがその中ガキ女子には「静かにしてください」と指導をしていたからそこは収まったが、ワシャが驚いたのは、ワシャの目から見れば、中学生にしても高校生にしても、どちらも子供なんだけど、中学生から見れば高校生は「ババア」なんだなぁ(しみじみ)。そんならワシャはヤツらから言わせれば「ジジイ」どころか「泥まみれ灰まみれのクソジジイ」てなところだろう。
高校女子は間もなくいなくなった。居心地が悪くなったんでしょうね。そうしたらね、その席に眼鏡をかけた丸顔のオッサンが座った。身なりはけっこうまともだ。よく図書館にいる暇を持て余した爺さんではなさそうだ。
中ガキ女子どもは、スタッフから注意された端は多少静かだったが、じきにまたべちゃくちゃと話し始めた。それがかなり五月蠅くなってきて、カウンターにいたスタッフが動きはじめたな……と思った時に、眼鏡、丸顔のオッサンが「ちょっと静かにしてくれ」と中ガキ生に言ったのだった。そうしたら中ガキ生……
「うるせいジジイ」
あ〜あ、言っちゃった。
中ガキ生なんだからもっと謙虚にしなくちゃ。
オジサン、ゆっくりと中ガキ生のほうに向きなおった。そしてにっこりと笑った。なにが始まるのか?
オジサンの笑顔が真顔に戻った。その途端である。波動砲のような大音声が響き渡った。
「じゃぁかぁしいクソガキ、おまえら誰のおかげで学校行けると思ってんだ。みんな大人が一所懸命に働いてくれているおかげだぞ。そんなことも分らないなんてホントにバカだな。クソガキだからただで食わせてもらっているんだ。一所懸命に勉強する以外にただ飯喰らいにできることがあると思ってんのか、知恵もないくせしやあがって、ちゃんとてめえらがやれることぐらいはまともにやってみやあがれ」
立て板に水のようだった。団十郎のツラネを聴いているようだった。中ガキ生は、鳩が豆でぽっうを食らったような顔をしている。それからオジサンの隣の中ガキ生は大人しく勉強に勤しみましたとさ。めでたしめでたし。