落語会

 昨日、安城落語会。今回は江戸落語ではなく上方落語の番だった。出演はコーディネーター桂文也と林家染二笑福亭仁智(じんち)、桂紋四郎の4人。
 出し物は文也が「寄合酒」、染二は「幽霊の辻」、仁智が「源太と兄貴」、紋四郎は「七度狐」であった。
 やっぱり三河の人は江戸落語好きなのかなぁ。瀧川鯉昇の回と比べると客がやや少ない。会場はいっぱいなんですよ。でも、客と客の間が少しずつ余裕があるんですね。
 さて、前座は紋四郎、上方には真打、二つ目、前座という階級がない。春蝶に入門したのが平成22年なので、東京でいうならば二つ目になったばかりだろう。春の蝶の弟子なので紋四郎、羽織姿もまだ白くて若い。上方落語のイケメンカレンダーの5月(5番目)ということで、すっきりした顔立ち。でも春風亭昇々のほうが二枚目だなぁ。
 文也は相変わらずの客いじりで会場を沸かせる。この芸が大きな会場ではできない。300人くらいの小ホールでいじりが成立し落語は活きてくる。鯉昇にしてもそうなのだが、寄席向きの噺家なのだろう。
 染二の声はでかい。会場ではドカンドカンと受けていたが、ワシャには大きい声が耳にささって落ち着いて聴いていられない。「幽霊の辻」という噺は日暮れから夜に向けての怪談話の要素をもった噺なのだから、もっと声を抑えて展開していけば面白いのに……。
 仁智の持ちネタ創作落語の『源太と兄貴』はメチャメチャおもしろかった。アホの兄貴とすっとぼけた源太がとんでもないシチュエーションを繰り返していく。「げんたー!」と兄貴が叫ぶ度に爆笑のうずだ。同じパターンの反復なのだが、あやされている赤ん坊のように毎回笑ってしまう。師匠の仁鶴というよりも大師匠の松鶴の芸を色濃く感じた。仁智は聴いて正解だった。

 そうそう安城落語会の客はよく笑うことで有名だ。噺家も演りやすい。だから染二もテンションが上がって熱演をしたのだろう。そんな中、まったく笑わない年寄りがいた。会場全体が腹をよじって笑っているのに、その人だけが笑わない。噺家もそのことに気がついたのだろう。チラチラとその爺さんを見るのだが、ここぞというツボにもはまらない。面白くないのならあんな前面に出て聴かなくてもいいのに……と思った。あるいは大須演芸場の関係者が来ていたと聞いたから、その人だったのかなぁ。最初から最後までまったく笑わなかった。それが興味深かった。