落語三昧

 夕べ、名古屋市民会館で「大名古屋落語会」。連日の落語になった(笑)。出演は、 柳家喬太郎(89)(53)、三遊亭白鳥(86)(53)、春風亭昇太(82)(57)、林家彦いち(89)(47)の四人である。ちなみに名前のあとの数字は入門年次と年齢。このままの順番で高座に上がったので、トリの彦いちが一番の兄さんかと思いきや、昇太が一番上だった。年齢でも昇太が最年長である。若作りをしているので、昇太が一番下だと思っていた。
 この四人、新作落語の尖兵である。圓丈チルドレンとも言われている。「SWA(創作話芸アソシエーション)」というユニットを結成し2004年から活動してきた。それぞれが個性的で爆笑の新作落語をいくつも持っている。
 まず喬太郎である。マクラで発揮される笑いのセンスは只者ではない。友達に誘われて名古屋の料理屋の2階でやっていた喬太郎の独演会にも顔を出したが、その炸裂具合はとんでもないものだった。料理屋の2階座敷だから50人も詰めれば満タンなんですよ。そこに喬太郎ビームが間近から発射されるのだからたまらない。ドッカンドッカン!と座敷じゅうが火の海になった。その新作の雄が昨日は「初天神」をかけた。前座噺である。喬太郎、「初天神」はよくかける。千葉の落語会でも聴いた。喬太郎だから濃密な新作を、あるいはもう少し大きなネタをやって欲しかったなぁ。
 白鳥である。なまえは優雅だが、ごつい。昨日もアディダス(三本ライン)の着物を着て登場した。演目は「五番アイアン」「マグロのカブト」「山手線」の三題話。自身も「僕の高座では、江戸前の芸は観られません。荒唐無稽な新作を演ります」と言ってはばからない。山手線内で巻き起こる非日常が展開される。
 昇太は「マサ子」というネタをかけた。夏の夜に怪談話をするという新作である。しかし、師走の押し迫った時期に夏のネタを持ってこなくてもよさそうには思う。後の解説で「季節の落語をもつ安心感」というようなことを言っていたが、でも怪談話は夏だろう。
 彦いちは巧かった。「睨み合い」という新作で、これも電車(京浜東北線)の中の出来事である。基本的に新作は落語家自身の体験であることが多いが、これも彦いち自身の体験による噺で爆笑をとっていた。また、喬太郎の演った「初天神」をブルネイ版で演ってみせたり、白鳥に登場した太った厚かましいオバサン二人を京浜東北線の場面にチラッと登場させるというサービスを忘れない。ワシャ的には技巧的なものも含めて彦いちがよかった。
 ただし、前の晩に柳家権太楼の一時間にわたる大ネタ「文七元結」を聴いた後だったから、それぞれ20分程度の四人衆の噺は、新作であるがゆえにおもしろいマクラにしか聴こえなかった。時間的な制約もあるのだが、40分を超えるような本格的な噺がいい。
 もうひとつ言っておくと、1000人以上入る大ホールでの落語というものがどうなのであろうか。マイクで音は拾うことができるが、仕草や表情を大きくすることができない。喬太郎も料理屋の2階、大須演芸場、そして名古屋市民会館などで見たけれど、やっぱり100〜300人くらいの場所が落語には適正ではないだろうか。落語は寄席の芸、手元や目線が見えてなんぼの職人芸なのである。

 終わってから金山で反省会。日本酒が取り揃えてある肴のうまい店で一献。「福井のしおウニ」は美味かった。また行こうっと。