寓話

 2冊の譬(たと)え話集を持っている。『イソップ寓話集』(中公文庫)と『ラ・フォンテーヌ寓話』(岩波文庫)である。どちらも動物が自由にものを言い行動して、人の世の苛烈さとでもいうのでしょうか、そういったものを垣間見せてくれる。ときには国や体制に対しても示唆を与える。子供向けのおとぎ話のようであるが、読み終えるとぐうの音も出ない寓話集なのである。
 イソップは紀元前6世紀に書かれたもので、ラ・フォンテーヌのほうは、イソップなどを参考にして17世紀に創られた。だから類似の話が多くある。「ウサギとカメ」、「牛とカエル」、「カラスとキツネ」などなど。「アリとキリギリス」はラ・フォンテーヌでは「セミとアリ」になっていたりする。
「オオカミと子羊」という話もどちらにも載っている。話はまったく同じだ。
 小川で子羊が水を飲んでいる。そこに腹をすかせたオオカミがやって来て、なんのかんのと文句をつけて、結局、子羊はオオカミに食べられましたとさ……という短い話だ。イソップの結びはこうだ。
《悪いことをしようと決めている人たちに対してはどんな正しい弁解も効果がないということをこの話は教えている。》
 ラ・フォンテーヌのほうは、冒頭でこう警告する。
《強者の理屈はいつでもまかり通る。》

 現代の名寓話『カエルの楽園』を書いた百田尚樹さんが『雑談力』(PHP新書)を上梓した。その中で雑談に使えるネタ本として『ラ・フォンテーヌ寓話』を紹介しておられる。そのフレーズでわざわざ「オオカミと子羊」の寓話を披露しながらね。この話をノウハウ本とはいえ自作にもってきたのは百田さんのセンスの良さであろう。この寓話を読んで、「支那中国と日本」、あるいは「尖閣諸島の現状」が浮かばなかったら、それはかなり平和ボケにやられている。
 参考までに原話を引いておきますね。
http://www.ab.auone-net.jp/~grimms/aesop45/45.html

 話が出たので『カエルの楽園』の話題を少し。
 もちろんワシャは『カエルの楽園』を出版早々に買って、すでに何度も読み返している。それを前提に。
 地元の図書館で『カエルの楽園』をもちろん購入している。どのくらい買っているのが気になって調べてみると、10冊の所蔵があって、それがことごとく貸出中なのである。で、まだ34人の予約が入っている。ほう、出版から時間が経過しているが意外と人気なんだな。読んだ人はこの寓話の言わんとしているところを読み解いてくれていればいいのだが。子供でもわかる寓話なんだけどね。ネットの書評には「なんだこのひどい話は!」とか怒っている感想もあったりして。染まった脳はなかなか柔らかくはならないことを教えている(笑)。