ワシャも歩けばネタに当たる

 注文しておいた本が届いたので、いつもの駅前の書店に立ち寄る。頼んでおいたのは、小林よりのり『ゴーマニズム戦歴』(ベスト新書)。あとは評論家の呉智英さんの連載が載っているので「週刊ポスト」と「LEON」を手に取る。
 新書コーナーに行って眺めていると気になる新刊があった。坂本葵『食魔 谷崎潤一郎』(新潮新書)である。帯には「その食い意地、芸術的なり!」とあった。
 およよ、ワシャは魯山人から内田百輭小泉武夫池波正太郎辺見庸渡辺淳一村松友視などいろいろな人の食に関する本を持っている。だから「食魔」という字を見て即反応してしまった。『陰翳礼讃』で羊羹を描写する谷崎の見事な筆には脱帽だった。その谷崎に関する「食論」ならおもしろかろうと、レジカウンターまで運んだ。
 レジにいた奥さんが『食魔』に反応した。
「やっぱりワルシャワさんが買われると思いました」
 ううむ、ここの奥さんにはワシャの読書傾向がばれている。
「著者の坂本葵さんは西三河に深い関係があるんですよ」
 え、そうなの。著者のプロフィールを見ると「愛知県生まれ」とある。
「ご両親が県立安城高校の教師だったんですよ。だからご両親の教え子が『あおいちゃん、あおいちゃん』ってけっこう知っている人が多いんですよ」
 ありゃま、谷崎潤一郎、食、安城ゆかりの研究者……こりゃまた一発仕掛けるしかありませんわなぁ。
「そうそう坂本さん、何月号だったか『芸術新潮』で、谷崎潤一郎の着物について書いておられましたよ」
 むふふふふ、坂本葵という名前には記憶がなかったが、「谷崎文学の着物」については覚えている。それは『芸術新潮』6月号で、ワシャの書棚に収まっている。
 また一つ、ネタが増えたわい。しめしめ。