重力

 ううむ、このところ地球の重力が強くなっていないか。昨日も今朝もそうだった。いったんは重力に抗って起き上がるのだが、また重力に引き戻されて床に吸いつけられるように横たわっている。重力がきつい。
 そんなアホな話はどうでもよかった。問題は「英国のEU離脱」である。それこそ、知恵の足りないワシャの話などどうでもいいか(笑)。でも、書いちゃおうっと。

 英国がEUから分離することを契機にして、スコットランドがEU残留を大義にしてグレートブリテン北アイルランド連合王国から独立する可能性は高い。今まで固まることで強度を保ってきたヨーロッパはパズルがバラバラになるように崩壊していくだろう。これが民主主義の宿痾というものかもしれない。100人中49人が「離脱すべきではない」と判断してもたった1人が「すべき」に回ればそちらが正義ということになる。このケースがそうだとは言わないが、少数の賢者が警告を発しても、多数の愚者による選択が政治を動かしていく。ヒトラーを選んだドイツはその典型であろう。
 そうなると民主主義を適当に操って国を支配するロシアや、一党独裁で大きな版図を牛耳る中共などのほうが賢明であるのか。民主主義などという面倒くさい、多分にムードに流されがちな制度よりも、一党の、それも一部の人間で判断できるシステムのほうが迅速な対応が可能である。
 南支那海、東支那海で日米が後手後手にまわっているのも、大きな要因としてこの制度のせいであることは間違いない。やすやすと沖縄あたりに反米、反本土の世論誘導を許してしまっているのもこの制度の穴に付け込まれているからである。党や軍が民主主義などという手続きに煩わされることなく周辺国に戦略展開できる身軽さが支那中国にあることも確かだ。
 おそらく支那中国で「民意だ!」と言って3万人も結集すれば、ただちに人民解放軍が襲来し、彼らを地球の重力から解放してくれるだろう。言論の自由な日本ではそんなことは有りえない。いくらあちらとつながっている(かもしれない)喧伝者が大声で喚きたてても、「少数の意見にも耳をかたむけなきゃ」という話になる。でもね、領土拡張を狙う覇権国家を利しているということになぜ気がつかないのだろう。
 チベットを見るがいい。領主などに抑圧されるチベットの人々を解放するという名目で人民解放軍がやってきた。それを引きこんだのはチベットの制度を否定する一部のチベット人自身だった。その結果、チベットはどうなった?文化も伝統も民族も破壊され、このままの状況が続けば21世紀後半にはチベットそのものが歴史から消えてしまう。何百人ものチベット人が、自分の体に火をつけて抗議の自殺を遂げている。もうそんな方法しか抵抗の術がないのだ。
 沖縄はチベットの轍を踏もうとしている。それを食い止める方法は、民主主義を信奉する国家には今のところない。しかし、今なら踏みとどまれる。木を見て森を見ないというのはまずい。30年後、50年後の大変な悲劇を招かないためにも、沖縄の人にぜひ『カエルの楽園』(新潮社)を読んで冷静に判断してもらいたい。

 英国がEU分離を決定し、スコットランドがイギリスから独立する。そうなれば沖縄独立論にも火が点く。チベットウイグルにも多少の飛び火はする。しかし、そこは独裁国家だからあっという間に鎮火するだろう。日本は民主主義国家だからそう簡単にはいかない。動きにくい分だけ付け入る穴が大きいのだ。県知事から中共の幹部にならないとも限らない。チベットでは実際にそういうことがあった。だから恐い。支那中国の重力をあまく見ないほうがいい。