注意二題

 一昨日、能を観に行ったと書いた。その途中の電車でのこと。午前10時台の車内は混んでいた。その車両は左右4席の8席が優先席で、ワシャと友だちは、その間の通路で立っていた。次の駅で、母親3人と子供3人という組み合わせの乗客が乗り込んできた。元気のいい子供は車内に飛び込むなり、ワシャの後ろをすり抜けて、シートと仕切り板の隙間に2人の子供はもぐりこんだりして車内で放牧している。母親たちは「子供は狭いところが好きだから」とか言いながら笑っている。左の後ろのシートに若い女性が1人で座っていた。優先席であることを自覚をしていたのだろう。ごそごそと立ち上がって席を空けた。そこに当然のように小太りの母親(ジャージ姿)が、ドカンと座り、その横に2歳くらいの子供を靴のままシートに立たせた。そりゃまずいだろう。それにシートを空けてくれた女性に一言の礼もなかった。
 礼儀もマナーもない、外出するのにTPOもわきまえない若い母親に落胆した。しかし、そこでは、叱るタイミングを逸した。だから、今度、なにか仕出かしたら注意しようと手ぐすねを引いて待っていた。
 電車が名古屋市の境を越えたころ、そのタイミングがやってきた。子供が通路側に足を突きだして、バタバタさせて遊んでいた。その拍子に、ワシャの隣に立っていた女性の和服の裾を蹴ったのだ。待ってました。ワシャは人ごみの中でも人を注意することができる。鼻腔から空気をいっぱい吸い込んで……。
「ごめんなさい」
 小太りな母親はすかさず和服の女性にわびを入れた。そしてあわてて子供を引きずりもどしてきちんと座らせたのである。ワシャは咄嗟に息を呑みこんだ。なんだ、いいお母さんじゃん。ワシャは何事もなかったかのように、車窓の風景に目を移したのであった。

 今朝の朝日新聞の社会面にこんな記事があった。兵庫県加古川市の75歳の無職のジジイ。自宅前でタバコを吸っていて、ポイ捨てしたところを小学生に目撃され注意された。そもそもそれだけで恥ずかしいジジイなのだが、このジジイ、「注意されて腹が立った」と小学生に暴行を加えたのである。なんというバカか。

 ここからは蛇足。
 この間も、帰宅する時の信号待ちでトヨタの高級車に乗った白髪の爺が窓を開けてタバコを吸っていた。右腕は窓の外である。「これは絶対に外に捨てるな」と思っていたら、案の定、矢印信号が出た途端、タバコを交差点内で捨てて、右折して走り去った。
 どっちのジジイも、タバコを吸うなら家の中で吸え、車の中で吸え、自分のプライベート空間の中で処理をしろ。
 最近、ジジイはとんでもないヤツが多い。歳をくっているというだけで敬う必要などなにもないわさ。