異文化が融けあうには百年

 西三河の某所に巨大団地がある。どこの団地とは言わないけれど、こういった地方都市の巨大団地が多国籍化している。おそらく周辺に工業地帯を持っている団地では全国的な傾向ではないだろうか。
 某団地、5階建て30戸程度の共同住宅が70数棟ある。人口は5000人を超える。その60%を外国人が占める。一度、その団地の中にあるスーパーにもぐり込んだことがあるのだけれど、雰囲気から臭いからおよそ日本ではなかった。無遠慮に飛び交う言語はもちろん日本語ではない。
 この団地の関係者に最近聞いた話だが、なにしろ外国人のマナーが悪い。夜中に大騒ぎをしたり、公共の場でバーベキューをしたりするのは当たり前。ベランダから立小便をするのもさほど珍しいことではないのだそうな。
 1年ほど前にはこんな事件もあった。その団地で、上半身裸の外国人が暴れているという通報が最寄りの交番に入った。警察官2名が現場に駆けつけ、その男を取り押さえようとしてもみ合いになった際に、男は警察官から拳銃を奪って発砲するという物騒な事件である。日本でなければ、警官は男に拳銃を突きつけ「フリーズ!」と警告すれば、事件は終わっていた。平和な日本だからもみ合いになって、こんな下手をうつわけだ。
 警察の批判をしたいわけではないので、そのことは措いておく。外国人が増えて、こういったマナー違反が激増し、延いては治安悪化を招いているということが問題として浮かび上がってくる。
 これに対して団地に元から住んでいる日本人も手をこまねいていたわけではない。外国人が増加してきたはなには、交流会を開いたり、コミュニティマナーの講習会を実施して文化の壁を取り払おうと努力もしたそうである。
 しかし、ことはそう簡単に運ばなかった。そういった努力はある一定の成果を出すのだが、また何年かすると元の木阿弥になってしまうという。なぜか。それは外国人が定着せず、流動するためにまた一から指導をしなければならないのだという。賽の河原の石積みに似た不毛のボランティアにさすがの旧住民も根を上げているのだそうな。
 こういった地域の最前線での悲鳴をも聞かず、経済団体は「外国人の移民を増やせ」とかほざいている。そりゃ企業の偉い人たちはいいですよ。治安のいい町の一角で、アルソックだかセコムのシールをベタベタと貼った豪邸や、セキュリティのしっかりした高級マンションの高層階に住んで庶民を見下ろしているんだから。
 でもね、ゴミゴミとした町には普通の日本人が、言語や習慣の違う明らかに異文化の連中と面を突き合わせて生活をしているのだ。軽々に「外国人労働者を大量に受け入れろ」とか言っているんじゃないよ。