連邦へ

 司馬遼太郎の『台湾紀行』にこんなフレーズがある。
《いうまでもなく、歩道は、公共のものである。
 が、台北では商店ごとの私が優っている。自店の都合で店頭の歩道を盛り上げたり、そのままであったりする。
「戦前の台北では、ありえないことでした」
 と、ある老台北(ラオタイペイ)が、日本時代のことをほめて(?)くれた。
蒋介石がきてから大陸の万人身勝手という風をもちこんだんです」》
 司馬さんは、台湾をことさら大切にした。とくに台湾人(タイワニーズ)が好きなのである。『台湾紀行』では2章をさいて李登輝さんのことを書いている。司馬さんと李登輝さんの人間としての交流は厚いものであった。
 台湾での李登輝さんとの交流を支えていたのが、前述の「老台北」という人物である。この方が、蔡焜燦(さいこんさん)氏であり、民間人でありながら、台湾の外交を引き受けている人物だった。
 蔡焜燦氏も、李登輝さんと同様に戦前は日本人である。日本の教育を受け、日本の道徳を是としていた。戦後、蒋介石とともに台湾になだれ込んできた「万人身勝手」な連中とは一線を画している。
 大陸系の馬英九総統が最後のあがきを見せているが、賢明なタイワニーズは軽蔑のまなざしで動向を見守っている。少なくとも、少なくないけれど、台湾人の大多数は蒋介石に迫害を受けた本省人なのである。かれらは大陸系の「万人身勝手」を知っている。そして日本のよさを肌感覚で理解してくれている。
 中華民国次期総統の呼び声の高い蔡英文
http://www.sankei.com/politics/news/151009/plt1510090030-n1.html
も安倍首相とも非公式に会っている。我々はもっとも近い親日国の中華民国と連携を深めていくべきだ。慶応大学の武田恒泰教授が言い出して、金美麗さんも同意していたが、「日本と中華民国は連邦を組むべき」ということである。それはとても素晴らしいことだと思う。議会はそれぞれの国にあっていい。その上で人的な交流や物流を自由に進める。そして防衛・外交などは二国で共同していく。もちろんそれは、両国に極めて近いところにある「万人身勝手」な体制に対抗するためである。
 司馬さんは言う。
《運よく台湾は、世界でもっとも教養の高く、かつ名利の欲の薄い元首を持つことができた。》
 李登輝さんのことである。この李登輝さんのDNAを強く受け継ぐ人材が蔡英文氏であることは間違いない。李登輝さんはご健在である。もうひとつ運のいいことに、日本の首相が安倍晋三なのだ。この時期に日台が連携せずしていつできるのか。時間は限られている。
 利権の巣窟のような大陸人が牛耳る台湾政界をようやくここまで押し戻してきた。だが、大陸からは中国共産党の魔の手が忍び寄っている。東シナ海南シナ海の波は高くなってきた。ここが先途である。
 連邦を目指せ。