義務を逃げ苦情に流れる

 コラムニストの勝谷誠彦さんが有料メルマガでこんなことを言っている。
高倉健さんが多く演じたのは「義務を果たす男」だった。彼ほどカッコよくなくてもひとには人生で何度かそういう場面がある。義務から逃げさせてばかりいると、ろくな結果にならないと心配する。》
 確かにそうだったなぁ。

 ワシャは地元で7年の間、消防団活動に従事していた。最初に声をかけてきたのは地元の先輩で「なんだかダサいなぁ」とは思ったが、何事も経験だと割り切って入団したのである。先輩は「3年でいいよ」と言っていたけれど、結果として7年やることになる。この間、4月から6月の3カ月は「操法訓練」で夜はほとんどつぶれた。
 午後7時30分に地元の小学校のグランドに集合、そこでホースや筒先の扱い方の練習をする。とくにワシャの所属していた分団は、常に上位に食い込む実力分団で、その練習は苛烈を極めた。「右向け右、回れ右、右向け右」で同じ位置に戻らなければいけないし、戻した踵が5mm以上ずれているとどやしつけられる。午後10時頃まで練習をして、終了後は、分団員の経営する店に飲みに行く。そんな生活が続いたものである。
 ワシャの分団は15名で構成されている。地域防災のためにつねにその人数をキープしておかなければならない。ということは新入分団員がなければ、ずっと古参が分団員で続けなければならない。それで7年のお務めになった。まだワシャはいいほうで、消防団全体でみると長い人は10年、15年という人がざらにいる。

 ある年度の末のこと、ワシャらは新入分団員確保のために地域の年頃の家を戸別訪問していた。まだ当時は個人情報保護法などという悪法が成立していなかったので、町内会から名簿を提供してもらって夜に廻ったものである。
 ところがこれがなかなか「うん」とは言ってくれないんですわ。なんやかやと理由をつけて引き受けてくれない。そういう輩にかぎって、消防団が消火活動の帰りにコンビニでジュースなどを買っていると、「消防車両がコンビニに停まって休憩していた。いいのか!」とかのクレームの電話を消防署に入れたりしてくれる。
 あるいは町内会で防災協力費という名目で年間200〜300円を徴収しているのだが、たまたま消防団員が地元で宴会をしようものなら、「自分たちの収めた協力費で消防団が飲んでいる」とやっぱり消防署にちくってくれる。協力費では消防ホースとか 防災資機材を買っているっちゅうの。飲み代はみんな自弁しているんだ。自分は義務を果たさずして、自分の生活と折り合いをつけながら義務を果たしている消防団員を誹謗するかなぁ。

 健さんの映画を観て「義務を果たすということ」を学んでほしいものだ。もちろんワシャも含めて。

 昨日のどこの新聞だったか、健さんのご命日が、たまたま森重久弥さんと森光子さんのそれと同日だった。だから「高倉健さんが亡くなった11月10日は昭和の名優2人の命日」という見出しのニュースになった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141119-00000026-sanspo-ent
 まぁ昭和の名優ということであればそうなのかなぁ?森光子さんはかわいい女優だったが名優とするにはいささか疑問があるけど……。それよりもね、もっとビッグネームの俳優の命日であることを忘れてはいけない。
 十一代目市川團十郎丈である。