地元で落語会

 金曜日に地元で落語会があった。出演は常連の瀧川鯉昇(りしょう)、桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)、二つ目の三笑亭可女次(かめじ)、前座の瀧川鯉津(こいつ)、ここまでは落語家。色物として檜山うめ吉。

 まず鯉昇、仲入り前のトリである。スーッと出てきて座布団に座る。禿げ上がった頭をつるりと撫でて、深海魚のようなギョロ目で客席を見渡す。もうこれだけで笑が起きる。歳を重ねるのが楽しみな落語家と言っていい。演目は「そば清」の蕎麦を餅にした変則版……と思いきや、実は原話の「蛇含草」だった。ううむ、まだまだワシャは落語を知らない。
 白酒は「佐々木政談」を掛けてきた。主人公の少年四郎吉、父親の綱五郎、奉行の佐々木信濃守などを見事に演じわけている。顔が童顔のせいか、四郎吉を演じるとホントに少年のように見えるから不思議だ。
 可女次は老人ネタの創作落語、マクラも年寄りにまつわる小話をずらりと並べてきた。ジジババのオンパレードだったので全体がやや単調になってしまった。
鯉津は「動物園」でごきげんをうかがう。「動物園」は落語としては短くて演じる役も少ないので演りやすい。11月に二つ目に昇進するとのことで、高座にも力が入っている。ようやく下働きから開放され、羽織を着られるようになるんだから当然か。

 さて、最後にとっておいたのが檜山うめ吉である。うめ吉という男名ではあるがれっきとした姐さんですぞ。この人。
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 このうめ吉が深海魚の後に出てきたから会場は息をのんだ。櫻井よし子と都蝶々を足して2で割って若くした感じとでも言おうか、ちょいと小粋なお姐さんでござんすよ。江戸端唄の「梅は咲いたか」や「腹の立つときゃ」などを、三味線を弾きながら細く唄う。
「腹の立つ時ゃ〜茶碗で呑みな〜呑めど呑めぬ〜呑めぬ酒なら助(す)けてもやろが〜〜」
いいねぇ。これがお座敷で、熱燗のチロリなんかが火鉢にかかっててさ、色っぽい師匠が「おひとつどうぞ」なんて言いながら酒を注いでくれっちゃた日にゃぁ、たまりませんぞ!
「師匠、手ずからお酌していただけるたぁ、ありがた山のほととぎす、恐れ入谷の鬼子母神ときたもんだ。それじゃぁ遠慮なくいただきやすがね……おっとととと、師匠、なみなみと注いじゃいましたね。こいつぁ口のほうから迎えにいかなきゃいけねえや……んぐんぐんぐ……くーっ、うめえ!」
 てなもんですわ。

 もちろん落語会で熱燗の呑めるわけはない。会がはねてから仲間と居酒屋に向かいましたぞ。鯵や鯨ののたたきで上燗をいただく。まだ耳元にはうめ吉の端唄が残っていて、それがまた美味しかった吉良負けた。