突然、クマに出会ったら

男はつらいよ』第33作は、中原理恵をマドンナに起用した。副題は「夜霧にむせぶ寅次郎」。作品としては全体的にバタバタした感があって、中原の演技も大したことがなく、シリーズの中では凡作と言っていい。
 ラストは、中原の北海道での結婚式である。そこに寅次郎も駆けつけるのだが、近道をして山越えをする。途中で寅次郎がヒグマに遭遇し大騒動の中でフィナーレを迎える、というドタバタ。
 そもそも寅次郎ほど旅慣れた男が、北海道も何度も足を運んでいる男が、近いからといって山に踏み込むだろうか。それに寅次郎を襲うヒグマだが、これがどう見てもキグルミのクマでしかない。ヒグマにさえ見えないのじゃ。

 さて、ここからが本題である。寅次郎は九死に一生を得て、ヒグマの襲撃をかわす。では、ワシャらがヒグマに出会ったらどうすればいいだろう。
 よくあるのが「死んだふりをする」だが、これは止めたほうがいい。ヒグマは平気で新鮮な死肉をあさる。つまりヒグマが空腹であれば食われる、ということになる。
「木に登る」ってぇのもありますな。でもね、これもなかなか難しい。そもそもあなた最近木に登ったことがありますか。樹種にもよるけれど、そう簡単に木登りっていうのはできやしない。それに3mくらいの高さならヒグマの充分に射程距離内だと思ったほうがいい。
「走って逃げる」これもいい方法とは言えないだろう。寅次郎はこの方法で逃げ切ったが、実際には、走り出すなどの急な行動は、野生動物の攻撃を触発してしまう。それに足場の悪い場所で人間は思っているほど早く走れない。ヒグマは鹿にも追いつくほどの足を持っている。
 正解は、『クマにあったらどうするか』(岩波文庫)の著者はこう言う。「山道で急にクマと出会ったら、立ち止まったままで話しかける」そして「荷物をその場において、ゆっくりと後ずさりをする」というのがベターなのだそうな。
 ぜひ、北海道でヒグマに遭遇したら、やってみてくだされ。