どっともどっち

 ずいぶん以前のことだから話してもいいだろう。ワシャの会社に、県会議員の秘書と名乗る人物から電話が入った。用件は、「愛知県内の某会社の重役と会ってほしい」というものである。その秘書が、県会議員の威を借りて横柄な態度だったのと、某会社の噂があまり芳しくなかったこともあって、その申し出を断った。
 地元選出の県議だと何やかやとうるさい。けれど、他の選挙区の県議などまったく関係がないからね。当時、係長だったけれど適当にあしらってしまった。
 その後、秘書はワシャの上司にも電話を掛けてきた。上司は、ワシャと比べるといい人なので(笑)、その申し入れを受け付けてしまった。会ってみれば、とても堅気には見えないプロレスラーのような男が二人現われて、あれを営業と言うのだろうか、半分、恐喝のような態度に終始したために、上司はすっかり萎縮してしまって、何も言えねぇんでやんの。
 それから、3ヶ月ほどして、某会社の社長や重役らが逮捕されるという大変な事件があった。これには我社と同種の会社がいくつも被害にあっていて、大騒ぎになったものだ。運のいいことに、我社は、関係を結ぶ前だった。担当係長が悪い奴だったので、なかなか手打ちをしない。グズグズグズグズ引き延ばしていたんですな。おかげで巻き込まれずにすみましたぞ。
 その時に、某会社のエージェントのようになってプレッシャーをかけてきた某県会議員、それとその威を借りた秘書の名前は未だに覚えていますぞ(笑)。

 さて、今朝の朝日新聞の社会面である。小出典聖(のりひと)愛知県議が、政務調査費を不正受給したとして辞職願を提出したんだとさ。言っておきますが、前述のエージェント県議はこの方ではありません。念のため。
 ともかく、減税日本の不祥事が立て続けに起こって、それを攻めていた自民党側からもバカが出てしまった。困ったものだ。
 この日記は、何人かの地方議員の方にも読んでいただいている。その人たちが真面目に地域づくりに奔走していることもよく知っている。しかし、議員というのはそういう人ばかりではないということである。政務調査費をくすねるバカ、詐欺会社に肩入れをするバカなども多いことは確かだ。
 愛知県議会事務局によれば、政務調査費を請求する支払証明書は、「県議の性善説に基づく。不正をチェックしようがない」なんだとさ。この手の性善説で県民の貴重な税金が、どれほどバカの懐に流れていったことか。

 政務調査費をくすねた愛知県議の記事の隣が、昨日、NHKの「クローズアップ現代」で放送された「取り調べ映像可視化」の問題を取り上げた記事だった。
 これがワシャの中でつながった。冒頭の某県議の話で、ある会社の役員が何人か逮捕されたと言った。その事件の裏取りのようなかたちで、県警から刑事が二人、我社にも表れた。これには気のいい課長は度肝を抜かれて、泡を吹いて倒れてしまったので、まったく対応ができなかった。仕方がないので課長補佐とワシャが、3回にわたって事情を聴取された。
 もちろんワシャらは何も悪いことをしていまへんから、刑事たちも丁寧な聞き取りに終始した。
 でもね、一つ違和感があったのが、すでにストーリーができていて、そちらの方向に発言を誘導しようとする「癖」が見られたことである。どうも県警は某県議を押さえたい、そんな意向が感じられた。
 我社はまったく某県議に対して義理はない。むしろ不快な対応をさせられたと思っている。でもね、警察の言う極端な働きかけのようなものはなかった。ないものはない、それははっきりと刑事に伝えた。そうすると刑事はこう言ったものである。
「ここできちんと(我々の意に沿った)発言をしておかないと、裁判に何度か来てもらって証言台に立ってもらうことになりますよ」
 でも、なかったことはなかった。天邪鬼なワシャは責められれば責められるほど意固地になってしまうのだった。

 この体験以降、厚生省の村木さんの事件などがあって、検察・警察の不祥事が続き、両者への信頼性は大きく揺らいだのだった。