つながることがおもしろい2

 週末は大垣市に所用で出かける予定だったがキャンセンルになって身が空いてしまった。それならと、古本屋回ることにした。
 今回の収穫は『日本の名随筆』(作品社)が20冊ほど手に入ったことである。『日本の名随筆』はいろいろな文章家の随筆が一気に読める。それもテーマを統一しているので、誰がどんなことを考えているのか窺い知ることができて楽しい。このシリーズ、全部で100巻ある。先は長い。こういうのがあるので古本屋通いは止められまへん。
『日本の名随筆』は箱に作家と題が書いてある。そこを見れば、お目当ての作家を選ぶことができようになっている。だから1巻1巻通読することはない。その時に興味を持っているこの分野のこの人の随筆が読みたい、というふうなチョイスの仕方がよろし。
 このところ高峰秀子に入れあげているので、さっそく40巻で「顔」と題された高峰の文章を見つけて読んだ。大女優が自分の顔に不満をぶつけ、映画界にいるために大勢の写真屋さんにナメるごとく撮られつくしたという。そしてこう結ぶ。
「私にはもう顔がなくなったのは悲しいことである」
 高峰らしいもの言いであろう。

 土曜日の夜、「鬼平犯科帳」のスペシャルがBSでやっていた。題は「高萩の捨五郎」である。「鬼平」はなにしろ話数が多い。だから題を聞いただけでは、どの話か判らないことがままある。でもね、見ているうちに「あ、あの作品だ」と思い出すことも多々ある。このドラマもそうだった。

 盗人の高萩の捨五郎がひょんなことから子供を救う。その折に狼藉者から一太刀を浴びて左足の腱を切ってしまう。たまたまそこにい合わせた平蔵が、健気な行動をとった盗人を哀れに思い、邸宅に引き取って看病をしたものである。
 その情の厚さに心を打たれた捨五郎は平蔵の密偵として働くようになるのだった。
 
 確か……小説はそこで終わっている。しかし、ドラマはもっと続く。スペシャルなんで演出家が話を組んだな。登場人物の中に妙義の團右衛門がいるので、その話との合作だった。でも、うまくまとめてある。演出家の力量なかなかである。
「高萩の捨五郎」の話は、「鬼平シリーズ」の文庫の第20巻にある。その間を復習のために読んでいると「顔」という話が出てきた。『日本の名随筆』と『鬼平犯科帳』がつながったので楽しかった。

『日本の名随筆』と一緒に『立往生のすすめ』(倫書房)も買った。5人の作家によるオムニバスとなっている。その中の一編に倉本聰のエッセイがあって、母親の躁鬱に関して書かれてあった。おもしろかった。
 それを読んだ後で、BSで「北の国から」92巣立ちが放映されていた。間に合ったのは、感動の後半だけだったが、それでも涙なくしては観られなかったですぞ。
 ここでも読書となにかがつながった。つながることはおもしろい。