暑い日には絵画鑑賞(最終回)

 そろそろ名古屋ボストン美術館を書くのに飽きてきた。最終回に曽我蕭白の「雲龍図」を取っておいたのだが、「吉備大臣入唐絵巻」、「平治物語絵巻」、「龐居士・霊昭女図屏風」の3つで精力を使い果たしたのじゃ。だからサラッといきますね。
 蕭白、江戸時代中期の画家である。蕪村、応挙などと同時代に生きている。ワシャの記憶によれば、蕪村、応挙はすでに何種か切手になっているが、蕭白は日本の切手では見あたらない。当時から奇矯の絵師と言われていたが、未だにその評価が定まっていないような気がする。
 その「雲龍図」である。これはただものではない。縦1.65m、横10.80mの大画面に龍が描かれている。迫力はある。目が離せない。しかし、どこそこ漫画チックなのである。写実的に龍をとらえていない。目玉の書き方でもそうだ。向こうにある目玉のほうが大きい。立体表現そのものを否定している。その両眼に対して、口の付き方もおかしい。完全に横を向いてしまっている。波の描き方も、独特で水木しげるを下手にしたような感じとでもいうのだろうか。全体的に平面的で、三次元として捉えにくい。ベタッとした絵という印象だ。でも目が離せない、不思議な絵だった。

 名古屋ボストン美術館に行った日は暑かった。熊谷市での今夏の最高気温を記録した日である。そんな中、美術館の中は空調がよく効いていた。効きすぎと言ってもいいだろう。女性にはショールの貸し出しをしていたくらいだ。
 ワシャはそんなことは想定済みなので、ジャケットを持参していた。入場して少し経つと汗が引く。それからは寒くなる一方なのでジャケットを羽織れば快適に絵画鑑賞ができるのだった。
 暑い日にはジャケットを持って絵画鑑賞が最適ですぞ。