東浦町の夢

 愛知県東浦町が昨年の国勢調査に市昇格をかけていた。町の行政関係者にとって市になることは悲願だったろう。国勢調査人口は5万80人、ぎりぎり市に昇格する数値だった。
 ところが、こういうことになった。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120227k0000m040126000c.html
http://www.asahi.com/national/update/0302/NGY201203020012.html
《人口が水増しされた可能性があると総務省が指摘した問題で、町は2日、町議会の全員協議会で、居住実態を確認しないまま住民票に基づいて調査票に居住者を書き加えたことを認めた。》(朝日新聞から)
 要するに、市に昇格するための人口5万人を確保するために、統計担当者が水増しをしたというわけ。
 この話にはいくつかの問題点がある。まず、制度の問題なのだろうが、人口5万人の東浦町の東側には、人口4万人の高浜市が存在している。制度変更で、こういった逆転現象があちこちで起きている。人口では上回っているのに「町」ゆえに常に風下に立たざるをえない。東浦町の行政関係者は長年悔しい思いをしてきたことだろう。
 次に国勢調査の杜撰さが問題だ。そもそも国勢調査は人の手によって行われる。だから、その内容はかなりいい加減なものとなっている。とくに最近は、大した秘密もないくせに「個人情報保護」を盾にして回答を拒むバカタレも続出している。
 だから、住民基本台帳国勢調査の人口差はかなり乖離しているというのが常識で、東浦町にしても、住民基本台帳なら5万人を楽に超えているだろう。
神谷明彦町長は「重複や居住実態のない調査票が見つかり、統計の信頼を損ねた責任は重大」》(朝日新聞から)
 そもそも国勢調査自体に信頼性はない。日本国全体の大雑把な統計という意味なら少しは役に立つのかもしれないが、地方の小さな町の人口ということであれば、その誤差はかなり大きい。町長が「責任重大」というほどのものではない。
 ワシャは国勢調査については、いろいろと問題提起してきた。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20101017
 もう一度言う。国勢調査など実態にそぐわないものなのだ。そんなものを市昇格の要件にしていること自体がおかしい。総務省統計局は、東浦町の調査票だけを精査するのではなくて、やるなら全自治体の再精査をしろよ。
 3点目である。これは毎日新聞から引く。
実はこれが一番問題なのだが、総務省に《10年12月に町人口の水増しを指摘する匿名の情報提供があった。》のである。たぶん、たった1本の電話だったろう。市制施行をおもしろくないと思っている卑怯者が匿名でちくったのである。これで、多くの町民の悲願が消えた。たった一人のノイジーマイノリティのせいで……。
 この卑怯者は、自分のチクリで市制施行がぶっとんだことで、不健全な達成感を味わっているのだろう。暗い部屋で一人ひそひそと笑んでいるのだろう。おぞましいね、こういうヤツって。
 
 今回は残念だったが、名古屋のベッドタウンであり、西三河工業地帯の一翼でもある。あせらなくてもすぐに5万人など超えてしまいまんがな。その時は、盛大に祝いましょうね。